日本経営管理教育協会が見る中国 第431回--磯山隆志

■ WWEとは

 WWE(World Wrestling Entertainment)はアメリカのプロレス興行団体である。2015年度の売上高は約4.84億ドル(約500億円)であり、ニューヨーク証券取引所にも上場している世界最大級のプロレス団体である。


 WWEの試合は社名のとおりストーリーを中心としたエンターテインメント性の高いものである。内容も善玉と悪役レスラーの対立という誰にでもわかりやすいストーリーになっている。所属するレスラーはスーパースターと呼ばれ、他のプロレス団体と一線を画している。

 試合は世界150カ国以上で放送され、放送回数1000回以上、20年以上放送されている番組もある。また、興行も世界各国で開催されており、年間で最大のイベントでは10万人以上の観客動員があった。

■ 中国人レスラーと初めて契約

 2016年の6月、WWEは初めて中国人アスリート、ワン・ビン選手と育成下契約を結んだ。同時にトライアウトも行い、7人の中国人アスリートと育成下契約を結んだ。さらに、番組の配信についても中国のサイトと契約したと発表した。

 9月10日には上海において、1万8000人が収容できる会場でイベントを開催した。このイベントでワン・ビン選手は早くもリングに上がり、デビュー戦で勝利を挙げた。

■ 中国のプロレス市場

 ワン・ビン選手がこんなにも早くデビューしたのは、イベントの集客に苦戦したことがあったという見方がある。WWEは以前から中国で興行を開催しており、数千人の観客を集めていた。
初めて中国でイベントを開催したのは2010年のことである。日本のプロレス団体も90年代から進出している。しかし、中国でプロレスを観戦する文化は、まだそれほど根付いていないようである。

 中国にはプロレス以外の格闘技団体も進出している。また、中国国内の格闘技団体でもキックボクシングなどが盛り上がりを見せてきている。いずれも中国人選手が所属し、活躍している。アメリカでも日本においても、プロレス人気が高まり、根付いた理由の一つとして国家や地域を意識したような、絶大な人気のあるスター選手の存在が大きかったと考えられる。例えば、戦後、力道山が外国人選手を倒す姿に国民は熱狂した。スポーツエンターテインメントではスター選手を意図的に作ることも可能である。しかし、その選手が受け入れられるか、どれだけの人気が出るかはわからない。今回の中国人WWEスーパースターの誕生が中国にプロレス市場を広げることになるのか注目される。(執筆者:日本経営管理教育協会・磯山隆志 編集担当:サーチナ編集部)(イメージ写真提供:123RF)(写真は日本経営管理教育協会提供、東京新宿のプロレス会場が入るビル) 


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