サントリー、飲料の新価値創造へ本腰 変化スピードが加速する国内外を複眼的に捉える専門部署が大ヒット商品の誕生目指して始動
左から大塚匠部長と三谷京平課長
 サントリービバレッジ&フードは、飲料の新価値創造に本腰を入れる。

 世界的な嗜好の変化のスピードが加速していることが背景。


 昨年4月、目まぐるしい変化を複眼的に捉えて、従来の事業基盤では到達できない活動を迅速に推進する専門部署・新価値創造部を新設。

 今春、新価値創造部が中心となって立案した方針に基づき、タイと日本でそれぞれ新商品が発売された。

 ブランドやカテゴリの垣根を超えた新価値創造は、これまでにも「サントリー天然水」や「BOSS」ブランドで行われてきたが、今後は酒類事業やウエルネス事業を含めたサントリーグループの全ての視点や強みを活かした新価値創造に取り組む。

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左から大塚匠部長と三谷京平課長 4月7日、発表会に登壇した大塚匠事業推進本部新価値創造部長は「変化をつぶさに捉えて、お客様にとって心地よいソリューションを提供していくことが新価値創造の本質」と語る。

 生活者のベネフィットを起点とし、ブランドやカテゴリ、さらには缶やペットボトル(PET)のパッケージ飲料の枠組みを超えていくことを強く意識する。

 「ブランドを担当すると、そのブランドが属するカテゴリの理解を深く極めることは基本中の基本だが、視野・視点を固定してしまう傾向にある。生活者は1つのカテゴリの飲料だけを飲んでいるわけではなく、1日の生活の中で食品・飲料の役割、ベネフィットを幅広く捉えていく必要がある」と指摘する。

 米国での既存カテゴリを超えた他社の商品開発事例には、お酒を飲まない人のナイトクラブでのクールな水やマテ茶ベースのオーガニックエナジードリンク、健康的な炭酸飲料、フィットネスエナジードリンクを挙げる。

 「海外に少し目を転じると、米国が非常に変化の先頭を切っている。メジャーカンパニーよりもスタートアップ企業が多数存在し、スピード感、そしてアジリティを持って市場成長にドライブをかけている」と紹介する。

 既存の容器にも縛られない。
 「例えば外食やご自身で作っていただくような飲料にまで視野・視点を広げて幅広く捉えていく」という。


 このように生活者の1日のニーズを複眼的に捉えていくには、既存の組織では困難と判断し新価値創造部の立ち上げに至った。

 「とにかく市場の変化がスピーディーになり、開発のレベルを一段と引き上げていかななければいけない。ただし、ブランド担当者が、自分のブランドが該当カテゴリで愛され続けていくということと、新しい機会を既存の枠組みを超えて見出していくという2つの仕事をするのは大変ということで、専門部隊が横串で入っていけるような組織体制にした」と説明する。

 立ち上げの背景には、グループ内の調整の難しさもある。

 サントリーウエルネス社が展開するサプリメントブランドの知見を活かして日本で4月14日に新発売した「ロコモアWATER」と「セサミン1000」の開発を進めるにあたり、大塚部長はその難しさを実感。

 「各々の事業で各々のカテゴリを磨いているため連携がとても大変。サプリメントの形状にも意味があり、それを飲料化するのはやはり難易度が高い。しかし、簡単にできるものは他でもできてしまうことから、今後は難易度の高いものをどんどん出していかないといけない。そのために二足のわらじをはくのは大変だということで新部署を立ち上げた」と繰り返す。

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主要事業展開国の商品
主要事業展開国の商品 生活者や市場の変化を多面的・多角的な視点で捉えるため、各事業展開国の担当者と協業。

 その協業を強力に後押しするため、主要事業展開国8カ国で8カ月にわたり社内外の100人を超えるメンバーがワークショップを参加して独自のグローバルプラットフォームを構築した。構築に要した総投資額は1億円以上に上る。


 グローバルプラットフォームについては「(グローバルとローカルの)違いだけではなくて共通性にも目を向けていくという2つの視点を獲得できたというのが非常に大きな成果だと思っている。ローカルごとに異なる開発を行っていく視点と、例えば日本で成功した商品を異なる国でも展開していくことが当然視野に入ってくる」と述べる。

 グローバルプラットフォームには、主要事業展開国8か国の生活者インサイト専門担当が厳選した生活者の30項目(30項目×8か国=240項目)に及ぶサイン(兆候)を蓄積。

 一元管理され、担当者が厳選された質の高い情報に即時アクセスできるようになっている。

 AI化を視野に入れ当面はデジタル化に取り組む。

 「我々の事業に対する機会と脅威が詳細にまとめられたシートが240枚もあり、これを一枚一枚めくっていくのは大変なため、すぐ引き出せるようなデジタル化に取り組んでいく」と語る。

 生活者へのアプローチ方法については「店頭起点で購買の瞬間を捉える購買者の側面(ビジネスインサイト)と日常生活における価値観やその国の文化、心理的・本能的な欲求といった人間としえの側面(コンシューマーインサイト)の両方の視点で統合的に生活者を理解していくことを強く意識している」との考えを明らかにする。

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「飲むサプリ」の第一弾商品
「飲むサプリ」の第一弾商品 新商品の開発にあたっては、「ウエルネスケア」と「ムードシフト」の2つの価値軸を起点にしていく。

 ウエルネスケアは、心身のウェルビーイングに着目したサントリーならではの資産を活用し新たな価値を提供する商品を意味し、前出の「ロコモアWATER」と「セサミン1000」の2品がこれに該当する。

 2品は、新シリーズ「飲むサプリ」の第一弾商品として4月14日に新発売。

 ターゲットは健康を気にしつつも習慣化や価格面などの側面からサプリを摂取するまでには至らない生活者を想定する。

 三谷京平事業推進本部新価値創造部課長は「40代以降の方には年齢を重ねるとともに不足しがちな成分を補いたいというニーズがあり、確かな成分やサプリブランドがお客様の納得のツボになる」との見方を示す。


 こうした見方から、40代以上のブランド認知率の高い「ロコモア」「セサミン」の2ブランドを採用した。

 「ロコモアWATER」は、軟骨由来成分であるコンドロイチン硫酸、筋肉由来成分であるアンセリンに加えてアミノ糖のグルコサミン塩酸塩、ポリフェノールのケルセチン配糖体を配合。同社ならではの創味技術で、飲みやすいレモン味に設計した。

 「セサミン1000」は、サプリメントの「セサミンEX」1日分と同量のゴマ約1000粒分のセサミンを配合するとともに、カルシウム・マルチビタミンを加え、ヨーグルトテイストに仕立てている。

 2品ともに機能性表示食品ではなく一般食品として販売している。

 「将来的には『ロコモアWATER』を機能性表示食品にすることも視野に入れているが時間を要するため、まずはブランド認知の高さという資産を活用してスピーディーに価値をお届けすることを優先した」(大塚部長)という。

サントリー、飲料の新価値創造へ本腰 変化スピードが加速する国内外を複眼的に捉える専門部署が大ヒット商品の誕生目指して始動
左から「SUNTORY Hy! WATER LOCK」と「GREEN DA・KA・RA」
左から「SUNTORY Hy! WATER LOCK」と「GREEN DA・KA・RA」 一方、ムードシフトは「日常の気分や生活に変化をもたらし、豊かで楽しい気分転換をもたらすもの」と定義され、これに当てはまるのは3月にタイで新発売した「SUNTORY Hy! WATER LOCK」。
 同商品は、グローバルプラットフォーム活用し、日本の「GREEN DA・KA・RA」の知見を取り入れて開発された「真の日常水分補給飲料」。

 開発にあたっては、オフィスワーカーが強冷房の室内で長時間過ごしていることに着目した。

 「乾燥した環境で水分が失われているが、水分補給の重要性が十分理解されておらず、刹那的な水分補給で体調を改善できていないというお客様の不満点を見出した」と大塚部長は振り返る。

 タイのセブン-イレブンで約3カ月間、先行販売を実施したところ、3月の出荷量は計画比1.8倍を記録した。

 「オフィスワーカーの方から、味わいや日本の技術に言及するコメントを多く確認している。
タイ市場に定着させるために、ローカルのメンバーと育成をしていく」と力を込める。

 タイ・日本以外の事業展開国においても新価値創造に向け同時進行でプロジェクトを推進している。
 国内では、強いブランドポートフォリオとは異なる新しい生活者とのエントリーポイントを創造すべく開発を推進。

 一方、海外については、同社の事業展開国で不足しているポートフォリオの穴埋めではなく、生活者インサイトを捉えカテゴリ再編を促すようなサブカテゴリの創造を目指していく。

 目標は1000万ケースレベルの大ヒット商品の誕生。
 「1000万ケースというのは飲料業界において何かしらお客様に変化をもたらし、飲料の購買行動に変化をもたらす大きなパワーを意味する。このようなインパクトを生み出していきたいという志だと理解していただきたい」と大塚部長は意欲をのぞかせる

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