新表記の狙いは、従来の表記に「純」の一文字を加えることでインパクトを持たせて国産茶葉である日本茶の価値を発信し、日本の生産者とともに持続的で活力ある産地づくりに取り組むことにある。
背景に、日本の茶産業が空洞化してしまうことへの危機感がある。
懸念される空洞化とはこうだ。海外の抹茶需要の高まりにより、煎茶から抹茶原料である碾茶(てんちゃ)への転作が進む。これにより煎茶の生産量が減少し煎茶の価格が高騰。煎茶の不足分を安価な海外産原料で穴埋めするといった構図となる。
左から5月12日発表会に登壇した伊藤園の志田光正執行役員マーケティング本部長、なかやまきんに君さん、有村架純さん、堀口園の堀口省吾さん、鹿児島堀口製茶の堀口大輔さん」 5月12日、発表会で志田光正執行役員マーケティング本部長は「日本のお茶の生産構造が碾茶に傾くことで、煎茶が減少し、国内では海外産の煎茶ばかりが飲まれる可能性がある。抹茶ブームが続いて生産者が元気になるのであればそれでいいが、仮に世界的な抹茶ブームが下火になり、煎茶をもう一度作りたいと生産者が思われても立ち戻れなくなる恐れがある」と警鐘を鳴らす。
こうした危機感から、今回の新表記は商品を訴求するものではなく、生産者とともに歩んでいきたいという意思表示となる。
「(新表記は)メーカーのあるべき姿としてお客様に価値を提供するためにもがいていくことを全社挙げてやっていくという宣言」と位置付けている。
価値提案の好例には、海外のコーヒーチェーン店が展開しているストロベリー抹茶やココナッツ抹茶などを挙げる。
「日本人が聞いたら違和感のあるメニューばかりだが、飲むととてもおいしい。日本は長らくデフレ社会に置かれ、新しい商品やサービスを生み出す活力がお茶業界の中でも失われてきた」とみている。
茶業界に活力を与えるべく、茶産地育成事業を新産地育成事業へと進化させて生産者にチャレンジを促すとともに、日本茶の多彩な価値提案や世界的な価値向上などに取り組む。
ハイブリッド生産ラインとは、生葉を煎茶と碾茶の両方に荒茶加工できるもの。現在、鹿児島県と静岡県でテスト稼働しており今後拡充していく。
「摘採のタイミングは2、3日しかなく、このタイミングを逃すと高値のお茶が作れないことから、例えば3枚の畑が一斉に芽吹いてしまうと大変なことになる。(碾茶用や甘みを出すために)被覆をすると育ちがゆっくりなるため、煎茶、碾茶の順で摘採・加工したほうが生産効率が上がり需要の変化にも対応できる」と説明する。
「例えば抹茶で液色の良さが求められれば、それに応える抹茶を作らなければいけない。ニーズがあれば旨味の強いお茶も作らないといけない。本当に求められるものづくりができないとポジションをいただけない」と危機感を募らせる。
世界的に需要が高まる一方で、生産者の高齢化や後継者不足などで離農が進み、お茶全体の生産量は減少傾向にある。
「純国産茶葉100%」の表記には、離農を防ぎ生産者とともに日本茶の価値創造に取り組みたいとの想いがにじむ。
「これだけお茶が注目されているのに、畑を畳まれるのはとても寂しいこと。本当に世界で求められるお茶を一緒に育てていきたい、一緒に投資をしていきたい」と呼びかける。
世界に打って出るなど茶業界の活性化にあたっては、若手の生産者や、日本茶が国の地理的表示(GI)に登録される見通しであることを追い風と捉える。
「コーヒー、ワイン、シャンパン、酒(日本酒)に続いて、日本茶を世界的なブランドに育成していきたい。日本茶のテロワール(土地・土壌)や、若手の生産者、熟練したクラフトマンシップを持たれた生産者の方たちの想い」を国内外に伝えていきたい」と意欲をのぞかせる。
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