【熾烈! MLB&NPBタイトル最終コーナー(Part3)】...の画像はこちら >>

現在.301の太田。4月に月間打率.415を記録するなど、今季その才能が開花した

シーズンも佳境に入り、"個"の戦いも激化。

日米のタイトル争いから目が離せない!

※成績はすべて日本時間9月3日現在

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■打者のレベルが低いわけではない

昨季、「3割打者が史上最少の3人」とニュースになった日本のプロ野球。今年もその傾向は続き、現在、セ・リーグでは泉口友汰(巨人)、パ・リーグでは太田 椋(オリックス)、村林一輝(楽天)の3人だけという状況だ。

このままでは両リーグ3割打者ゼロの可能性もある。この現象について、現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏は「今の野球で打率を残すのは非常に難しい」と語る。

「今は歴史的な『投高打低』の時代。といっても打者のレベルが低いわけではなく、投手のレベル向上が顕著です。

球速が上がっただけでなく、変化球は全方向に洗練されているのでランダム性が高く、的を絞れない。その上、配球はデータを駆使し、より高度化されている。ひと口に〝速い球〟といってもフォーシームもツーシームもカット系もあり、打者はなかなか的を絞ることができません」

加えて、投手有利な状況がますます進んでいる。

「オールスター以降は改善されたものの、今季もボールは異常に飛ばず、ストライクゾーンも広い。捕手のフレーミング技術も上がっていて、データ化が進んで守備シフトもより洗練されている。

さらに、投手全体のレベルが上がり、従来のローテ下位や敗戦処理レベルの投手が1軍で登板する機会が減少。

打者が息を抜ける場面がありません」

そんな状況で、打率ランキング上位につける選手たちにはある共通項があるという。

「変化球に対応しながら高めに伸びるストレートを打つには、上から叩くような意識が必要。バットを肩に乗せ、バットのグリップを頭に近づけて構え、そのまま横に振り出す。

今季、打撃が向上した村林も〝横振り〟に変えましたし、打率上位にいる太田や小園海斗(広島)、中野拓夢(阪神)、周東佑京(ソフトバンク)らも横振り。外国人打者で日本球界に対応できるのも、基本的には横振りタイプです」

MLBでは大谷やジャッジを筆頭に〝縦振り〟が流行しているという話を聞くが、実情は異なるという。

「大谷もジャッジも身長190cm以上だから、縦振りでちょうどゾーンを振り抜けるだけ。身長が高くない選手は横振りのほうがストライクゾーンをたたきやすい。小柄ながらも首位打者経験のあるホセ・アルトゥーベ(アストロズ)やムーキー・ベッツ(ドジャース)もバットを寝かせた構えからの横振りです」

実は「投高打低」現象は近年のMLBでも同じ。ただ、MLBでは投手側だけでなく、打者側も積極的にデータ活用することで、打撃技術の向上につながっているという。

「日本でもソフトバンクが相手投手をシミュレーションできる『トラジェクトアーク』という打撃マシンを導入していますが、球界全体で活用し、打者のレベル向上につなげるには時間がかかりそうです」

来季からバンテリンドームが外野にテラス型観客席を導入し、甲子園球場のラッキーゾーン復活の機運も高まっているが、「フェアゾーンの縮小」は打撃成績の向上につながるものなのか?

「甲子園は広すぎて浜風もあるので、右翼側だけラッキーゾーンを復活してもいい。バンテリンドームが狭くなると本塁打は出やすくなりますが、そもそもとらえる能力がなければ意味がない。むしろ、日本の球場はファウルグラウンドが広いので、ファウルゾーンに客席を増設するほうが打者有利になりそうです」

史上初の「打率2割台の首位打者」が誕生するかも含め、今後の動向を見守りたい。

文/オグマナオト 写真/時事通信社

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