シーズンも佳境に入り、"個"の戦いも激化。日米のタイトル争いから目が離せない!

※成績はすべて日本時間9月3日現在

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■山本由伸の「次」は誰だ?

オリックス時代の山本由伸(現ドジャース)が2021年から3年間独占した先発投手最高の栄誉、沢村賞。

だが、その山本が海を渡った昨季は「該当者なし」に終わった。

「そもそも、昨季も15勝3敗、防御率1.67の菅野智之(当時巨人、現オリオールズ)は受賞にふさわしかった。『3完投は少ない』『ローテ6番手スタートだったから』という理由で受賞を逃したともいわれていますが、選考委員の『気分』ではなく、現代野球の『実情』を加味してほしい」

今年も空位なのか? 山本の「次」となる、新たな沢村賞投手の誕生か? 現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏はリバン・モイネロ(ソフトバンク)、伊藤大海(日本ハム)、才木浩人と村上頌樹(共に阪神)を候補に挙げる。

【熾烈! MLB&NPBタイトル最終コーナー(Part4)】...の画像はこちら >>

12球団トップの防御率1.08を誇るモイネロ。9月の投球次第では0点台を達成する可能性も

「モイネロは防御率1.08。結局、点を取られないことが投手の究極と考えれば群を抜きます。全球種が素晴らしく、どれも勝負球になる。さらに、捕手の海野隆司による絶対に間違えない根気強い配球も圧倒的。

伊藤はスタミナ、根性、ストレートの質は相当いいですが、やや一発病の傾向があり、防御率は2.51。打低の時代に見栄えは良くないものの、勝利数、奪三振数、投球回数は両リーグ1位。ここにきてスプリットの質が改善してきたのは好材料です」

【熾烈! MLB&NPBタイトル最終コーナー(Part4)】昨季は該当者なし! 「新時代」の沢村賞争い
勝利数、奪三振数、投球回数で12球団トップの伊藤。防御率が改善すれば沢村賞に近づく

勝利数、奪三振数、投球回数で12球団トップの伊藤。防御率が改善すれば沢村賞に近づく

阪神勢のふたりは共に2桁勝利、防御率1点台~2点台前半と好調だ。

「才木は最近少し調子を上げてきました。打たれない、点を取られないという意味では素晴らしい投手です。村上もMVPを受賞した2年前ほどではないにせよ、安定感がある。ただ、モイネロ、伊藤と比べると阪神勢は少し物足りない印象もあります」

となると、パの優勝を争うチームのエース同士の一騎打ちか。8月以降、この両投手が投げ合う機会も増えている。

「ふたりの直接対決の結果とチームの順位次第かもしれません。現状の数字、内容であればモイネロ優勢ですが、伊藤が15勝以上、防御率を2点台前半に抑え、チームも優勝すれば逆転の目もあります。5完投も立派な数字です」

ほかの投手では、前半戦で無双した今井達也(西武)が後半戦で失速してしまった。

「今井は熱中症からコンディションが悪化。また、ソフトバンク打線に対して『前に飛ばす気がない』と言及して話題になりましたが、状況を打破するほどの技術の引き出しがないことを露呈してしまった、とも言えます」

投手のタイトル争いに注目すると、セ・リーグの奪三振数トップはトレバー・バウアー(DeNA)。ただ、お股ニキ氏は苦言を呈する。

「バウアーは、奪三振が多くても点を取られたら意味がないという典型。

防御率4.34は規定投球回到達者で最下位。次に悪い髙橋宏斗(中日)でも2.73なので、いかに攻略されているかがわかります」

沢村賞は先発完投型投手に贈られる賞だが、今年最も無双している投手は連続無失点試合の日本記録を更新し続けるリリーフ・石井大智(阪神)だろう。今季は49試合登板で失点わずか1。防御率0.18という驚異的な数字だ。

「石井もモイネロ同様、ストレート、スライダー、フォークと投げる球種がどれも素晴らしいです」

ただ、石井は中継ぎと抑えを兼務するため、このままではタイトルには手が届かない。

「阪神では及川雅貴も素晴らしいですが、貢献度は石井がさらに上。MVPは佐藤輝明ら野手が受賞するでしょうが、指標やタイトルだけでは見えない圧倒的な無双ぶりだと思います」

文/オグマナオト 写真/時事通信社

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