◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人2―0楽天(7日・東京ドーム)
打球はきれいな弧を描いて左翼席まで伸びた。大歓声の中、巨人・増田陸は右手を突き上げた。
3日に亡くなった長嶋さんに弔い星を届けるべく臨んだ一戦。5連敗中のチームを救ったのは、背番号61だった。一挙手一投足でファンを魅了し、天覧試合でサヨナラ本塁打を放つなど、記録にも記憶にも残るミスター。増田陸のプロ1号は22年5月15日の中日戦(東京D)、ミスターが観戦する目の前で生まれた。「技術も大事だけれど、相手に向かっていく気持ちや、熱い気持ちも大事だと思う」。ここ一番で勝負強さを発揮し、「燃える男」と称された長嶋さんにも通ずる強い気持ちを持つ。
1009日ぶりの本塁打を放った5月9日のヤクルト戦(神宮)の翌朝、増田陸は誰もいないG球場の室内練習場に向かった。マシンを相手に一人黙々とバットを振り続けること20分。スイング軌道を確認しながら、大粒の汗を流した。「練習前に打ち込むのはいつも通り。普通のこと」と話した表情に、プロとしての覚悟をにじませた。
この試合までの最近6試合では22打数2安打、9分1厘とバットが湿っていた。「最近、全然打ててなくて、それでも使ってくれているので」と期待に応える決勝弾で、チームを交流戦今季初勝利に導いた。4位からの巻き返しへ、元気印がチームに明るい光を差し込む。(加藤 翔平)