◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 意外な場所で、後輩の名前を耳にした。2月中旬、アリゾナでキャンプを張るMLB球団を回った。

ドジャースを訪れていた大勢の報道陣、関係者の中に、本紙評論家の高橋由伸さんの姿もあった。

 巨人監督だった時代に私が東京ドームでボールボーイをしていた縁もあり、こちらから話しかけた。出身校の話題になると、慶大OBの高橋さんから「入江君が入ったよね!」。私の母校である栃木・石橋高から今春に慶大野球部に入部した入江祥太投手(1年)の名前が挙がった。23年春のセンバツに21世紀枠で出場し、昨夏は常連の作新学院を破って甲子園に初出場&初勝利。背番号6を背負いながらエース級の活躍を見せた、快進撃の立役者だ。

 石橋は下野市にある県立高校。10年ほど前、私が部員だった時代には秋の県大会で8強に入ったこともあるが、それがニュースになるようなチームだった。グラウンドはサッカー部と兼用。練習は午後5時からの約2時間で、夜は塾で自習する。バッグには英語や古文の単語帳をしのばせる。昔とそれほど変わらない、ごく普通の環境の中で過ごしてきたにもかかわらず、入江のハートの強さは特筆ものだった。

甲子園の初戦の直前、「お客さんも多いだろうし、マジで楽しみです」とサラリと言ってのけたのが忘れられない。

 5月20日の神宮。だいぶ髪が伸びた入江が、新たな一歩を踏み出した。東京六大学春季リーグの法大戦で救援デビュー。先頭打者に被弾するも、2回1安打1失点、2奪三振と上々の内容だった。次々と目標をかなえる姿に、石橋で初めてのプロ野球選手誕生の夢も託さずにいられない。(MLB担当・竹内 夏紀)

 ◆竹内 夏紀(たけうち・なつき)2019年入社。大相撲、ロッテ担当を経てMLB担当。

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