◆日本生命セ・パ交流戦 2025 ソフトバンク5―2巨人(10日・みずほペイペイドーム)

 山田は雄たけびを上げ、左手でガッツポーズした。福岡に集まったG党からの熱い歓声をかみしめながら、笑顔でベンチへ駆けた。

先発・井上が危険球退場に。いきなり巡ってきた1軍初登板の舞台は0―1の2回、1死満塁のしびれる場面。「とにかく自分のできる投球をしようと思って」。高鳴る胸を抑え、今宮を4球目、チェンジアップで引っかけさせて三ゴロ併殺。大ピンチを切り抜けた。

 2―1の5回に1死一、三塁としたところで降板。交代した石川が近藤に同点の右前適時打を浴び、3回42球2安打1失点。最速146キロを計測した直球にチェンジアップなどを有効に使い、初登板ながら見事な火消しを見せるなど存在感を示した。「自分の真っすぐがある程度、通用したので、自信を持って投げて今後も投げていきたい」と胸を張った。

 同期の背中を追い走ってきた。21年にJR東日本からドラフト2位で巨人に入団。同期の大勢と「新人王を2人で争おう!」と誓い合うも現実は厳しかった。

大勢が1年目から守護神として活躍し、新人王を獲得する中、1軍での登板がないまま今季は育成スタート。「(新人王は)全然ノーチャンスになっちゃいましたけどね、僕は。大勢さんには離されてしまいましたけど、まだまだ人生長いのでここから巻き返せるように」

 3月から5月下旬まではウエスタン・リーグのくふうハヤテに派遣。コーチから右足の使い方などの助言をもらい、試行錯誤しながら平均球速が3キロアップ。ハヤテでは先発ローテの一角として防御率1・79をマーク。予定を前倒しにして巨人に戻ると、支配下登録を勝ち取った。

 この日は母・恵さんらが応援に駆けつける中、好投。「やっと(1軍の舞台に)立てたので、ここからどんどん巻き返していけるようにやりたい」。つかみ取った1軍の舞台で、さらに飛躍を遂げる。(水上 智恵)

 ◇山田龍聖アラカルト

 ▽生まれ 2000年9月7日、富山・氷見市。24歳

 ▽サイズ 183センチ、82キロ

 ▽投打 左投左打

 ▽球歴 高岡商では2年春夏、3年夏の甲子園に出場。3年夏は16強入りし、高校日本代表に選出。

JR東日本を経て21年ドラフト2位で巨人入団

 ▽派遣 育成契約の今季は3月から5月下旬までウエスタン・リーグのくふうハヤテに派遣。先発を任されて9登板で防御率1・79をマークし、巨人復帰後の6月9日に支配下復帰

 ▽趣味 サウナ

 ▽好きな色 緑

 ▽好きな言葉 感謝

 ▽あだ名 「やまちゃん」

 ◆清水隆行氏Point 1軍デビューとなった山田は上々の内容を示した。育成も経験し、苦労してたどりついた初登板が、1死満塁の緊急登板という場面。緊張もあったはずだが、堂々と持ち味を発揮していた。直球の質で勝負するタイプだ。球速は140キロ台中盤だが、打者はそれ以上に速く感じているのではないか。テイクバックが小さく、タイミングが計りづらいから打者が差し込まれていた。体でうまく隠して球が見える時間を短くすることで、打者はプレートから本塁までの18・44メートルより近くで投げられている感覚だろう。変化球の精度がもっと上がれば、楽しみな存在だ。(野球評論家・清水 隆行)

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