◆日本生命セ・パ交流戦 2025 楽天5―8中日(11日・楽天モバイル)

 中日・涌井秀章投手(38)がまた一歩、偉大な背中に近づいた。楽天から移籍後初となる古巣戦に先発し、5回8安打4失点で交流戦通算27勝目。

石川(ヤクルト)の同29勝に次ぎ、和田(ソフトバンク)と並ぶ歴代2位の偉業だ。「野手に感謝。中継ぎにも感謝」と足早にバスに乗り込んだベテラン。この日の投球に、決して満足はしていない様子だった。

 四隅をつく抜群の制球力を武器に初回は3者凡退。7点の援護をもらった3回1死三塁、小郷の左犠飛で失点を許した。5回にも1死三塁から太田の中前適時打で1点を返され、渡辺の左犠飛と味方の失策の間に続けて2点を奪われた。だが、失点から大きく崩れないところが投球術。100球の粘投でリードを守った。

 冷静さが、強さの理由かもしれない。今季、3年連続の開幕ローテ入りを逃したが、焦りはなかった。「シーズンが終わった時に、あの1か月があったから、よかったって思えればそれでいい」。

21日に39歳を迎えるが、とにかく走る。後輩も目を丸くするほど。沖縄キャンプでは例年より気温が低く、走る量を減らしたこともあって調整が遅れたが、暖かくなった3、4月に走り込み、カバーした。

 新人から21年連続勝利を挙げた時も答えは同じだった。「(現役生活が)終わった時に記録は出てくる。まだ一線でやりたいから、気にしていない」。目先の目標より、その先を見据えることがポリシーだ。21年目で4球団目。涌井にとって、この日の勝利は通過点に過ぎない。(森下 知玲)

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