◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人5―2西武(21日・東京ドーム)

 巨人が西武に2試合連続で逆転勝ちし、4カードぶりの勝ち越しを決めた。0―2の7回に打者9人で5点の集中打。

4年目の岡田悠希外野手(25)の2点二塁打で追い付くと、代打・増田陸内野手(25)が決勝3ランを放った。1イニング5点以上は、3月29日のヤクルト戦(東京D)の2回に6点を取って以来。左打者8人を並べた打線は与座に6回まで2安打無得点も、4投手の継投で相手を2点に抑え勝機を見いだした。チームは貯金を再び1とした。

 ただ、がむしゃらに走り出した。ライナー性の弾道が左翼席へ伸びていく。増田陸は一塁ベースを蹴り、右手の人さし指を高々と掲げた。「打ってちょっと走り出してから入ったなって思いました。打った瞬間はまだ、ホームランバッターじゃないんで分からなかったです」。決勝の5号3ランは、プロ通算10号にして4本目の代打アーチ。お祭り騒ぎのナインの手荒い祝福を受け、心の底から喜びがこみ上げてきた。

 燃えていた。

17試合ぶりのベンチスタート。2点を追う7回に入る前「投手のところで代打で行くぞ」と伝えられた。17戦連続無失点の西武・甲斐野から、ファームでともに汗を流してきた岡田が同点の2点適時二塁打。ヒーローになるチャンスは2死一、三塁だ。「みんながつないでくれて、すごく興奮してました」。3球目の浮いたフォークを完璧に捉えた。今季の打率は2割7分4厘だが、代打としては驚異の5割7分1厘。3月29日のヤクルト戦の2回に6点を奪って以来、67試合ぶりとなる1イニング5得点の猛攻を締めくくった。お立ち台に立つなり「最高でーす!」。絶叫が、この日一番の大歓声と重なった。

 自覚が行動を変えた。一塁のポジションをつかもうとしていた5月中旬。

全体練習開始前に必ず、球場の資料室へ足を延ばすようになった。朝早くから泉口らと肩を並べて相手投手を分析する姿に「練習もたくさんするし、いい方向に進んでくれている」と亀井打撃コーチ。不振だった2年前はファームの試合中に涙を流すこともあった男は「日頃の準備が大事。2軍の時から口うるさく監督やコーチに言われてたんで、そういうのが本当に生きた」と頼もしく成長した。

 10日のソフトバンク戦(ペイペイD)の試合後。「常に自分の近くにバットを置いておきたい」と相棒を宿舎に持ち帰った。11、12日はチーム宿舎の部屋から球場まで約15分間、バットを持ちながら歩いた。宿舎でも球場の通路でも、道すがらバットの軌道を確かめる。すれ違う関係者が声をかけられないほどの空気をまとった“ながら通勤”。24時間野球と向き合う姿勢が、ブレイクの下地にある。

 チームは連勝で4カードぶりの勝ち越しを決めた。「僕を含めて若い選手が活躍したら、チームの勢いもつくと思う。

でも負けたくないんで、みんなより練習します」。バットと熱いハートで、苦しむ打線に火をつける。(内田 拓希)

編集部おすすめ