巨人のライバルだった名選手の連続インタビュー「巨人が恐れた男たち」。第6回は“世界の盗塁王”こと元阪急の福本豊さん(77)=スポーツ報知評論家=だ。
守備の名手でもあった福本さん。1974年の球宴第2戦(西宮)では、長嶋さんを「まるで猿みたいだ…」とあぜんとさせたスーパープレーを演じた。
全パの「1番・中堅」で出場。5回1死一、二塁から、全セの3番・田淵幸一(阪神)が左中間へ大飛球を打ち上げると、金網に足をかけてよじ登り、体をめいっぱい伸ばして“ホームラン”をもぎ取った。
「コーチに練習で言われてきた通りや。ボールと一緒に走るな、落下点まで先に行って、打球を待つくらいの余裕を持たなあかん、て。フェンス登る練習はしてなかったんやけどね」
打っても、7回に星野仙一(中日)から左越えソロ。この年で引退するミスターも4回に球宴で最後となる3ランを放ったが、MVPは福本さんがかっさらった。
「西宮は当時は(照明の関係で)暗かったから、いい写真がないんですよ。ちょっとボヤけとって…」
それだけがちょっと悔しそうだった。
◆福本 豊(ふくもと・ゆたか)1947年11月7日、大阪生まれ。77歳。大鉄高(現阪南大高)、松下電器を経て、68年のドラフト7位で阪急(現オリックス)に入団。2年目から13年連続盗塁王。72年は当時の“世界記録”となる106盗塁。通算1065盗塁、115三塁打はNPB記録。外野手部門でダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデン・グラブ賞)も歴代最多の12度受賞。88年に引退し、2002年に殿堂入り。左投左打。