◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 テレビ中継に映っていても詳細は分からない。その内容を伝えることが仕事であると自覚しつつ、ささいなことに目を向けられないという反省も多々ある。

そこで、気になる人は多いと思うが、あまりしない質問。「ピンチでマウンドに集まり、何を話すの?」。広島・大瀬良大地投手は11日のロッテ戦の7回、自身を囲んだ内野陣に言った。

 「ここは一球一球に時間を使って、じっくり投げるから」

 好投し、2―1で迎えたイニング。打ち取った打球が続けて安打になり、さらに味方の失策で同点になった。なおも1死三塁の場面だ。序盤からテンポのいい投球を意識し、実行した試合。「ガラリと変えるので、伝えておいた方が守りやすいと思って」。守備と一体になった投球で逆転を許さず、延長戦の勝利を呼んだ。

 ただ、これはイレギュラーな会話。普段はベンチの指示を受け、野手から言葉をかけられることがほとんどだという。投球が180度変わることに加え「絶対に点を取られたくないという気持ちを伝えたかった」とのことだ。

 昨季は防御率1・86で6勝6敗。今季も12登板のうち10度は2点以内に抑えたが、2勝4敗と白星に恵まれない。

 投球のリズムが悪いから失策が生まれる? 攻撃につながらない?

 野球に接していれば、よく耳にする。これは根拠のない、イメージだ。あらゆるデータが出そろう現在も、そんな数値は聞いたことがない。でも実際に多くの選手が感じ、大瀬良投手も「あると思います」と認めた。だからこその言動なのだが、ここまで気を使うことのできる右腕に限って、無援の原因が自身にあるとは思えない。早く“運”が向くことを祈るばかりだ。(プロ野球担当・安藤 理)

 ◆安藤 理(あんどう・おさむ)21年入社。プロ野球取材は17年目。25年はソフトバンク、広島、中日を中心に取材。

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