◆第107回全国高校野球選手権大会第9日 ▽2回戦 仙台育英6―2開星(14日・甲子園)

 2010年夏、悲劇の落球。開星OBの本田紘章さん(32)がスタンドからエールを送っている。

「1回戦はテレビで。(8年ぶりの夏出場を)とても楽しみに来ました。背筋がゾワゾワする(笑)」と仙台育英のユニホームを見つめていた。

 本田さんは一般入試で入学するも、野々村直通監督(73)による肉体改造の末、2年春のセンバツから外野手としてスタメンを勝ち取った。「守備には自信があった」とチーム1の守備力を誇っていた。

 しかし3年時には右肩の肩関節を損傷。思うように送球ができず、守備練習やシートノックも自ら外れていた。満身創痍(そうい)だ。痛み止めを打ち、臨んだ最後の夏。「天狗になっていた」と振り返る。

 風が強かった10年夏の仙台育英との1回戦、5―4で迎えた9回二死満塁。本田さんは浅い中飛を落球。

「言い訳はできない。まさかだった。落球した瞬間は記憶がない」。結果的に逆転を許し、5―6で敗戦し涙をのんだ。同学年の阪神・糸原を中心には「落としたくて落としたわけではない」と励ましを受けたという。

 苦い経験となったが、大阪の大学でも野球を続けた。現在は島根に戻り、伐採関係の会社で施工管理として働いている。「安全第一の仕事。野球で培った最後まで気を抜かない意識が生きている」と語った。休日は草野球をする。「野球は失敗が7割。成功の3割を追い求めるのが楽しい」。

 悲劇の落球から15年。久しぶりの甲子園だ。「フライは両手で捕ろう(笑)」と本田さん。大応援団の三塁側アルプスから熱い声援を送り続けている。

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