◆JERA セ・リーグ ヤクルト1―7巨人(21日・神宮)

 感触は確かだった。巨人・リチャード内野手(26)は少し余韻に浸り、走り出した。

1―1の2回無死二塁、相手先発・石川が高めに投じた甘い直球系の球をフルスイング。「(田中将を)勝たせたかったです。その思いだけです」。打球は巨人ファンの待つ左翼スタンド中段に飛び込んだ。大歓声の中、悠々とダイヤモンドを一周。この回一挙5点の口火を切った。

 普段から「マー君さん」と呼ぶ、憧れの人をバットで強力援護した。「君」と「さん」が交じる不思議な呼び名だが、リチャードなりの敬意が込められている。「僕らの世代では(雲の)上の存在。(周囲の呼び名が)マー君マー君、の流れの中で『マー君さん』といつも呼ばせてもらっています」。試合後のベンチでは活躍を笑顔でたたえ合うなどすっかり打ち解けている。「試合が始まったらバチッと戦闘モードに入る方で、僕も見習わせてもらっている。

かといって私生活で近寄れないわけでもなくて、本当にしゃべったら教えてくれる。めっちゃいい人ですよ」。かつて眺めているだけだった球界の大先輩が今ではチームメート。最高のお手本が近くにいる。

 試合前には刺激になる出来事があった。母校の沖縄尚学が山梨学院を破り、夏の甲子園では初の決勝進出。しっかり結果をチェックし「びっくりです。ここまで来たので、悔いのないように楽しんでほしいなと思います」。後輩たちの活躍が新天地を生き抜く活力になっている。

 打率は1割9分5厘だが、この3連戦は12打数6安打、2本塁打、9打点。抜群の存在感を放ち、キャリアハイのシーズン22打点となった。一発で試合の雰囲気をガラリと変えられる背番号52。

打線に欠かせない存在になった。(臼井 恭香)

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