◆第107回全国高校野球選手権大会第14日 ▽準決勝 日大三4―2県岐阜商=延長10回タイブレーク=(21日・甲子園)

 日大三(西東京)が“公立の星”県岐阜商を延長10回タイブレークの末に撃破し、全国制覇した2011年以来14年ぶり3度目の決勝進出を決めた。エース右腕・近藤優樹(3年)が4回途中から救援。

6回2/3を1安打1失点と好投し、打っても同点打&V打と躍動した。

 投げそうで、投げない。日大三が2点リードで迎えた延長10回2死一、三塁。近藤は長い間合いの後、直球を投じた。痛烈な打球は一ゴロになった。試合終了、決勝進出だ。3万7000人の歓声とため息が交錯する中、エースは両手を握り、最高の笑顔を見せた。

 「球が速くないので、間とかいろんなことを変えてやっています」。同点の4回1死二、三塁から救援。最速は138キロだが、スローカーブを効果的に操り、緩急で幻惑した。笑顔を絶やさず投げ切った。「接戦でも笑っていれば、味方が打ってくれると思っていました」。

笑う門には福が来た。

 打ってもすごい。1点を追う8回1死一、二塁では外角直球を中前に同点打。10回1死二、三塁でも外角直球を中前に運び、決勝点をたたき出した。「当てれば何とかなる」と涼しげな近藤に三木有造監督(51)も「何とかする子。必ず打つんです」と最敬礼した。

 相手は4強唯一の公立校。判官びいきの観客も後押しし、甲子園は完全アウェーと化した。そんな逆境も味方にした。県岐阜商の名物応援、郷ひろみの名曲「GOLDFINGER’99」を「アチチ~アチ!」とマウンド上で口ずさんだ。前日にはYouTubeで、県岐阜商のブラバン応援を検索して視聴。「自分を応援してくれると勝手に妄想して。

楽しかったです」。警戒していた横山温大は3打数無安打に封じた。「いい打者だったけど、打たれなくて良かった」。登板前には大事MANブラザーズバンドの「それが大事」を熱唱するのがルーチン。心をアチチにして力投する。それが大事だった。

 三木監督の指導理念は「ガッツ・気合・根性」。近藤も共鳴する。「今の時代、根性とかアレですけど、実際は根性だと思う」。相手を上回った要素に「気持ちじゃないですか」と胸を張った。いざ決勝。「自分らしくやっていければ」とエース。

ど根性全開で、3396チームの頂点へ上り詰める。

(加藤 弘士)

 ◆近藤 優樹(こんどう・ゆうき)2007年7月23日、東京都生まれ。18歳。幼稚園の年長から墨田リトルで野球を始め、小6で関東大会3位。両国中では東京青山シニアで投手。中3で関東大会出場。日大三に進み、1年秋に背番号18で初めてベンチ入り。2年秋から背番号10で、今大会から1番を背負う。好きな言葉は「強気」。171センチ、81キロ。右投右打。

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