◆JERA セ・リーグ 巨人2―4DeNA(24日・東京ドーム)
巨人がDeNAに敗れ、連勝が3で止まった。手痛い敗戦の中で、輝きを放ったのはリチャード内野手(26)だ。
規格外のパワーが、本拠地に2年ぶりの轟音(ごうおん)を響かせた。リチャードが放った打球は天井をなぞるように放物線を描き、最後はゴンと左中間席上部「太田胃散」のビジョン広告にぶち当たった。東京Dでは23年8月の岡本以来となる“看板直撃弾”。自己最多の8号ソロは「ちょっと合わせた感があった」と会心ではなくても、打球速度185キロ、飛距離147メートルを計測した。
4点を追う5回2死。竹田の初球の内角143キロフォークをすくい上げた。メジャーのデータ分析サイト「スタットキャスト」を参照すると、飛距離は今季のMLBでトラウト(エンゼルス)の147・5メートルに続く2位に相当する。それを伝え聞くと「体形が似てますもんね」とニヤリ。師匠のソフトバンク・山川が「飛距離ならメジャーでも天下を取れる」と太鼓判を押すパワーを証明した。大谷の今季最長飛距離(136・6メートル)をも上回る特大弾は、苦しい展開でムカムカが続いたG党が留飲を下げる“いい薬”となった。
阿部監督の助言が潜在能力を引き出してくれた。試合前のフリー打撃。丁寧なミートを心がけていたら「ハーフスイングとか、しょぼいことすんな」とゲキが飛んだ。吹っ切れた。「全部、豪快にいこうと思ってたっす」。全4打席で初球をフルスイングした。
7月中旬からベンチでメモを取っているのも指揮官のすすめ。「詳しくは言えない」と内容は企業秘密だが、打席の反省を踏まえて投手の配球などを自己分析している。22日に黒革の新手帳が届き、表紙に「リチャード」と記した。試合中に自らスコアラーの元へ足を運ぶようになり「じゃないと打てないです。難しいです、直感とかでいくのは」と狙い球を整理して打席へ向かうようになっている。
映像広告に打球を直撃させた打者に贈られる「ビッグボードホームラン賞」の賞金100万円の使い道も規格外だった。
一発が出れば同点の9回1死一塁は「鳥肌立ちそうな」大歓声に押されて打席へ。三振に倒れたものの、直近6戦4発と止まらない男への期待は日に日に高まる。「目標はまだ先にあるんで。喜びはしますけど、まだ8本ですよね?」。ドでかい一発は、さらなる飛躍へのきっかけに過ぎない。(内田 拓希)
〇…リチャードが飛距離147メートルの驚弾で獲得した「ビッグボードホームラン賞」は、球団では23年の岡本以来47本目(21人目)となった。東京D開場3年目の1990年から「東京ドームスポンサー賞」(当時)として贈られている同賞。
【堀内恒夫Point】 落ちないフォークは、ただのハーフスピードの真っすぐだからな。そりゃリチャードは打つさ。速い球に詰まらされ、曲がり球で空振りさせられるから変化球を意識して待っていたんだろう。でも、まあ失投を見逃さず打ったんだから、たいしたもんだよ。あの一発で球場のムードはガラリと変わって、逆転もしそうな雰囲気になったのもの。ホームランの力はすごい。8番にこのバッターがいるのは脅威に違いないよ。(スポーツ報知評論家・堀内 恒夫)
◆MLB今季の飛距離ベスト5
〈1〉147.5メートル トラウト(エンゼルス)
〈2〉146メートル バクストン(ツインズ)
〈3〉144.8メートル キャロル(Dバックス)
〈4〉143.3メートル オハピー(エンゼルス)
〈5〉143メートル ジャッジ(ヤンキース)
〈39〉136.6メートル 大谷(ドジャース)
※大谷のメジャー最長は23年6月30日のDバックス戦の150.3メートル