◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 8月初旬、猛暑の高崎市の球場。ソフトボールで21年東京五輪金メダルの後藤希友(24)=戸田中央=のもがく姿があった。

エースとしてマウンドに立つことを目指すロス五輪まで、3年。代表合宿後の取材で、習得中の変化球について「回転がかかりにくいのか? それともフォーム的に…」と質問をすると、途中で回答をかぶせてきた。「手首の使い方ひとつでも癖がある。それを直すのに時間がかかる」。19年に当時高3の後藤を取材してから初めてのことだった。感じたのは焦り。上野由岐子(43)=ビックカメラ高崎=も「少し悩んでいる」と気にするほどだ。

 チーム最年少20歳で初出場した東京五輪では、日本人左腕最速113キロの直球、チェンジアップを軸に、主に中継ぎでチームを金メダルに導いた。4年がたち、大黒柱・上野に次ぐ立場から、主戦に変わった。当然、宇津木麗華監督(62)の求めるものも高くなった。

 世界一のエースになるために必要なものは―。指揮官は「三振を取れない」と指摘。

追い込んでも球種が少なく、決め球を絞られてファウルで粘られる姿が目立つ。宿敵・米国は打線が強力。球数を投げれば攻略されるだろう。殻を破るため、下回転の直球を持つ後藤は、逆回転のライズボールを習得中だが「難しさを感じる」と苦戦している。

 ただ、諦めるつもりはない。1月には米国修業に出た。「日本のエースになれるように人としても、技術も向上させたい」。上野だって速球に頼らない投球を身につけ、五輪で2度頂点に立った。何度も「覚悟」と口にした後藤が、真のエースになる姿を楽しみにしたい。(ソフトボール担当・宮下 京香)

 ◆宮下 京香(みやした・けいか) 2018年入社。22年までゴルフ、23年から五輪競技を担当。昨夏パリ五輪を取材。

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