甲子園のど真ん中で阪神・佐藤輝明内野手(26)がもみくちゃになった。「このためにやってるようなもん。
昨秋、藤川監督にリーダーを託された。「姿勢を背中で見せてくれ」。歴代指揮官から取り組みや態度に苦言を呈されてきた主砲。真っ先に期待を口にしてくれた新監督の思いに「応えたかった」。直後の秋季キャンプ、いつもは端にいたアップで中心に立った。「もう5年目。周りにも影響する」。男の覚悟だった。
4月8日のヤクルト戦(甲子園)で今季初のベンチスタート。
他人に干渉しないが、動いたこともある。8月、判定や凡打に感情を出す森下を諭した。「気持ちの浮き沈みを見せてはいけない」。自らも経験したから、弟分の姿がもどかしかった。思い返したのは入団時の矢野監督の言葉。
人間的成長に比例するように、潜在能力を発揮できずにいた打撃も開花。ステップ幅にテイクバック…。向き合い続けた先にあったコンパクトな新フォームで覚醒した。36本、89打点はリーグ断トツで、バース以来となる球団39年ぶりのホームラン王は、ほぼ確実。昨季は12球団ワースト23失策の守りも5失策と改善した。
甲子園のお膝元・西宮で育ち、幼少期から幾度も通った本拠地。かつての自分と同じように声を張り上げてくれる虎党と歓喜をともにした。「本当に最高です!」。最後の最後まで大きな背中を見せた。(直川 響)