くふうハヤテの倉本寿彦内野手(34)が7日、しずおか報知の取材に応じた。リーグも終盤を迎える中、1学年上で、同じくかつてDeNAでもプレーしたくふうハヤテの田中健二朗投手(35)が今季限りで現役引退を表明。

今季、ウエスタンリーグで一時打率トップ(9月7日現在、打率はリーグ4位の2割8分5厘)に立つなど、存在感を示し続ける左打者が、自身の「現在地」について語った。

 4日に田中が、今季限りで現役引退することを発表。DeNAでの8年間に加え、くふうハヤテでも2年間を共にした仲間との別れに、倉本は思いを明かした。「10年くらい一緒にやっている選手は少ないと思いますし、一緒にやっていて『まだできる』と思うところも正直あります」。そう語り、その労をねぎらった。一方、自身については「僕もしっかり頑張っていきたい」と気を引き締めた。

 くふうハヤテ創設1年目の昨季、社会人野球・日本新薬からチームに加入。NPB復帰を目指すも、右脇腹の痛みなどの影響で出場は65試合にとどまり、守備についたのは36試合。今季は、正三塁手として98試合中85試合に出場した。規定打席にも到達。8月には一時、打率リーグトップに浮上するなど、存在感を発揮している。

 7日の西武戦では、後援会のファンがスタンドに集結。

呼びかけからわずか1週間で50人近いファンが応援に駆けつけ、名前入りタオルを掲げエールを送った。試合後にも、自主練習に励む仕事人・倉本の姿が、ファンの励みになっている。

 DeNA時代から倉本を応援するファンの一人は、くふうハヤテ入団1年目のオフに、地元の茅ケ崎FMラジオに出演する倉本の姿を見て、「今までと違った側面を見た」と話していた。これについて倉本は「今まで呼ばれる機会がなかっただけです(笑)。でも、できることは挑戦した方がいいのかなと思っています。挑戦をスローガンにしているこのチームに来て、その大事さが、個人的にも少しわかってきたような気がします」とほほえんだ。

 1軍経験が豊富な倉本は、チーム内でも若手からの信頼が厚い。中には、名付けられたニックネームを野球教室の名前に使い始める選手も現れるほどだ。

 そんな倉本にも、社会人野球での苦労があった。2022年オフ、DeNAから戦力外通告を受けた後、古巣・日本新薬に復帰。当初はプロ経験者ということで距離を感じる場面も多かったという。「壁だったり、先入観があって、難しかったです。

でも、そこをどう砕こうかなと思いながら、なるべく声をかけたり、ご飯に行ったりしました」。そうした経験が、今のチームでも、若手との距離を縮める上で生きている。

 リーグは残り15試合。34歳の倉本は、今なお野球への情熱が衰えていなかった。「ケガなく行きたいというのが一番。(去就についてはシーズンが)終わった時に考えようと思っています。ただ必要とされるなら、(続行も)プラスの方向で考えたいなとは思っています」。力強い言葉に、野球への真摯な姿勢がにじんだ。

 ◆倉本 寿彦(くらもと・としひこ)1991年1月7日、神奈川・茅ケ崎市生まれ。34歳。横浜高から創価大と社会人野球・日本新薬を経由し、14年ドラフト3位でDeNAに入団。ルーキーイヤーの15年から遊撃で開幕スタメンを勝ち取り、17年にはフルイニング出場。

8年間で667試合出場、477安打を積み重ねたが、22年オフに自由契約を告げられた。23年は古巣の日本新薬でプレーを経て、くふうハヤテに入団した。180センチ、85キロ。右投左打。

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