夏合宿特集第3弾の最終回は、昨季の学生駅伝2冠で箱根駅伝3位の国学院大。昨季、出雲駅伝と全日本大学駅伝を快勝したチームは唯一、逃した箱根路の初制覇を今季最大の目標に掲げ、夏を全力で駆け抜けた。

就任17年目の前田康弘監督(47)は「昨年以上の練習が積めました」と手応え。「今季こそ箱根で勝ちます」と主将の上原琉翔(りゅうと、4年)もチーム全員の思いを代弁した。「継承」と「革新」をスローガンに箱根の頂上を目指す。

 大学駅伝界には「夏を制する者が箱根を制する」という格言がある。泥臭く走り込んだチームが新春の箱根路で活躍する傾向からだ。国学院大の夏合宿で重要な練習の1つが標高約1530メートルで起伏が激しい長野・蓼科高原の女神湖周回コース(1周約1・8キロ)で行われる32キロ走。今年は主将の上原、エースで副将の青木瑠郁(るい、4年)らが先頭を引っ張り、過去最高のタイムでゴールした。前田監督は「故障しないように練習をセーブさせることが私の仕事です」と充実した表情で話した。

 今季のチームスローガンは「はばちかす~想(おも)いの継承、そして革新へ~」。上原主将は「『はばちかす』は僕の地元の沖縄の方言で『名をとどろかせる』などの意味です」と説明。対照的な「継承」と「革新」についても熱く語った。「箱根で勝つ、という思いを継承しながら、改善すべき点があれば改善するということです。

例えば、朝の補強トレーニングは昨年より時間をかけて行うようにした。その結果、故障者がいなくなり、チームが底上げされました」

 昨季まで箱根で3年連続2区を走った平林清澄(22)=ロジスティード=が卒業。後継者候補は青木、マラソン日本人学生歴代8位の高山豪起(4年)らが挙がる。青木は「他校のエースとバチバチに戦って勝ちたい」と力強い。

 昨季、出雲4区と全日本5区で区間賞の野中恒亨(3年)、箱根7区2位の辻原輝(3年)らは往路で他校の主力と対等以上に戦える力を持つ。箱根10区3位の吉田蔵之介(3年)ら単独走に強い復路タイプの選手も充実。さらにルーキーの高石樹、野田顕臣ら新戦力も台頭している。

 鍵は山上りの5区だ。前々回の上原は区間17位、前回は高山が14位と苦戦した。「上原、高山は平地の主要区間を任せたい。5区は下級生を育てています」と指揮官は戦略の一端を明かす。

 19年の出雲で学生3大駅伝初優勝を果たして以降、3大駅伝の平均順位は4・06位。

安定した力を発揮している。今季のチーム目標はあくまで「箱根駅伝総合優勝」。青木は「前回、本気で勝ちに行って勝てなかった。だからこそ、見えてきたものがあります」と言葉に力を込めた。勝つ喜びと負けた悔しさ。昨季、その両方を知った国学院大は、1つ上のレベルのチームに成長して今季の駅伝シーズンに臨む。(竹内 達朗)

 〇…昨季の主将でエースの平林は卒業後も前田監督の指導を受け、国学院大を練習拠点としている。後輩たちにとって心強い存在だ。8月の合宿にも同行。昨夏の練習では先頭でチームを引っ張ったが、今夏は最後尾で後輩を見守るようにして走った。青木は「いつも平林さんと一緒に練習できることはありがたい。負けないようにしたいと思っています」と前向きに話した。

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