◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇井上尚弥(判定)ムロジョン・アフマダリエフ●(14日、名古屋・IGアリーナ)

 スーパーバンタム級の世界4団体統一王者・井上尚弥(32)=大橋=が元WBA&IBF統一王者ムロジョン・アフマダリエフ(30)=ウズベキスタン=を破り、4本のベルトを死守した。父の真吾トレーナー(54)は、スポーツ報知に手記を寄稿。

「最大の強敵」をくだすまでの道のりを振り返るとともに、「スーパーバンタム級の完全制覇」と祝福した。

 最高の練習が最高の結果につながりました。疲れがたまって少し腰が痛いとか、そんなことは今回、一切なかったです。ケガもせず、練習だけに集中できて、最後までやりたいことができました。今日はテクニックとボクシングIQで勝負しようと決めていました。アフマダリエフに勝ったことで、誰もが「尚弥がナンバーワン」と認めてくれるかな? スーパーバンタム級の完全制覇と言えると思います。

 練習では毎回、テーマを決めて、ナオとしっかりやりとりすることができました。プロになって初の出稽古を帝拳ジムでさせてもらいました。2度行きましたが、1回目は、自分には納得できるものではなかった。周りはたぶん、分からなかったでしょう。「自分のジムでできるスパーリングを、よそでもできなかったら意味がないよ」と伝えたら、2回目はガラリと変わりました。指摘した事を修正し、自分を納得させられる内容に変えてきた。

さすがの適応力、修正力。2回目はパーフェクトでした。

 タパレスとの練習も、全てがプラスでした。練習ができる体に仕上げてきた彼は毎回、ナオを倒す気で来るから緊張感がある。ナオはパンチをもらったらヤバイって感じながらも、相手をパンチで後方に下がらせる。下がったタパレスはさらに頑張る。どちらの気持ちが先に折れるかの勝負に、ナオはさらに力を入れる。減量をしていない元2団体統一王者を、減量に入ったばかりのナオが押し込めることができた。これ以上の手応えはなかったですね。

 自分は仕事をしながら、大人になってボクシングを覚えました。中途半端にやりたくなかったので、ボクシングを突きつめている時、自分の子供がリンクしてきた。ナオが「僕は強くなりたいんだ」って。

やれることを毎日、全力でやろうと決めて練習してきた。小学校の時から世界王者を目指した訳ではなく、単に強くなりたかったから、中途半端にしないで納得できるように頑張っていこうねってというスタートでした。それは今も変わらないです。

 8月の誕生日にナオからは時計を入れるケースをもらいました。旅行にも持って行けるもので、すごく良くてとても気に入っています。そして今日の勝利もうれしいです。自分は今回の試合だけを考えてきましたから、次戦については改めて、です。ただ、来年にはまた、ナオと弟の拓真(元WBA世界バンタム級王者=大橋)と2人で世界戦の同じリングに上がる姿を見たいと思っています。(大橋ジム・トレーナー)

 ◆井上 真吾(いのうえ・しんご)1971年8月24日、神奈川・座間市生まれ。54歳。有限会社明成塗装代表取締役を務め、不動産業などの実業家の顔を持つ一方、大橋ジムにトレーナーとして所属し、息子の井上尚弥、拓真兄弟、おいの浩樹らを指導している。2014年には、最も功績を残したトレーナーをたたえるエディ・タウンゼント賞を受賞。

23年にはWBCと日本で最優秀トレーナーに選ばれ、24年はWBA年間最優秀トレーナー賞を受賞。

編集部おすすめ