◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇井上尚弥(判定)ムロジョン・アフマダリエフ●(14日、名古屋・IGアリーナ)
世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(32)=大橋=が、WBA同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(30)=ウズベキスタン=を3―0の大差判定で下し、史上最多の4団体統一王座5度目の防衛に成功した。世界戦26連勝は史上最多記録に並んだ。
「キャリア最大の強敵」を華麗にさばいてみせた。尚弥はアフマダリエフの強打をスウェーバックし鼻先でかわすと、フットワークで距離を完全支配。中間距離では鋭い踏み込みから右ボディーを突き刺し、アフマダリエフの前進を右アッパーのカウンターでとらえた。光速の攻防で五輪メダリストの難敵を翻弄(ほんろう)し、「アウトボクシングもいけるでしょー。誰が衰えたって?」とジョークも交えて1万6000人のファンに呼びかけた。
バンタム級王者時代の19年11月ノニト・ドネア(フィリピン)第1戦以来、5年10か月ぶりに12ラウンドを戦い抜いた。「倒しにいかないことがこれほど難しいんだという発見もあった。倒しにいきたい気持ちをぐっとこらえて判定に持っていけた。100点をつけてもいいんじゃないかな」。
苦い教訓を生かし、堅実なボクシングをつくり上げた。過去のダウンは右のガードが下がり、顔面に左フックを浴びたもの。「打ち急ぎ、油断、過信から生まれたダウン」と分析し、パンチを出した後は必ず防御で終わる動きを染みこませ、つけ入る隙を与えなかった。演習となったのが7月下旬から1か月間、尚弥とアフマダリエフともに対戦経験がある元WBA&IBFスーパーバンタム級王者マーロン・タパレス(33)=フィリピン=とのスパーリング。仮想アフマダリエフを演じたタパレスから攻略の糸口を授かった。プロデビュー後初、13年ぶりの出稽古も敢行。名門・帝拳ジムが誇るサウスポー地域王者4選手ともスパーを重ねた。
次戦について「具体的な話で言うと12月にサウジアラビアであると聞いている」と明かした。12月27日、ピカソの挑戦を受けることが内定している。年間4試合は、デビュー2年目の13年以来となる。
サウジ興行では、すでにスーパーバンタム級でWBA1位にランクされる中谷、元世界2階級王者の寺地拳四朗ら複数の日本人選手の参戦も計画されている。
4団体統一王座の5度の防衛は史上単独最多。世界戦26連勝は伝説のヘビー級王者ジョー・ルイス、5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(ともに米国)に並ぶ史上最多。新たなアウトボクシングスタイルも手に入れたモンスターは、誰も足を踏み入れたことのない孤高の道を切り開いていく。(勝田 成紀)