◆世界陸上 第4日(16日、国立競技場)
男子110メートル障害決勝で、昨年のパリ五輪5位の村竹ラシッド(23)=JAL=が13秒18(向かい風0・3メートル)で5位入賞を果たした。レース後は目標のメダルにはわずか0秒06届かず悔し涙を流した。
3位以内に、村竹の名前はなかった。5位の電光掲示板を確認するとしゃがみ込み、大の字になった。「本気でメダル取りに1年間必死に練習して。何が足りなかったんだろう。何が間違っていたんだろう」。表彰台まであと0秒06。2年連続の世界大会入賞でも、満足できない。「人生でこんなに悔しい経験はない」と涙が止まらなかった。
決勝で披露することを決めていた人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のポーズで気合を入れた。
昨年のパリ五輪で同種目日本勢初の決勝に進み、メダルに0秒12まで迫る5位入賞。チームテントに戻った村竹を出迎えた山崎一彦コーチ(54)が「新しい歴史をつくれて良かった」とたたえると、第一声は「海外、一緒に回りましょう!」だった。快挙の満足感を上回る思いでこの東京大会を見据えた。メダルを本気で狙い、今季は世界最高峰のダイヤモンドリーグで試合を重ねた。
海外トップ選手にもまれ、成長した。「怖いもので、慣れてきた自分もいる。仲間として認められている」とレースの前後は海外選手らと会話する機会も増え、山崎コーチも「立ち居振る舞いが変わってきた。風格も出てきた」と明かす。移動や海外調整で一般的に国内よりもタイムが落ちることが多いが、村竹は違う。レース中盤からペースを抑えた試合を除くと、今季の平均タイムは13秒15。
21年東京五輪。順大2年だった村竹は、同年の日本選手権で参加標準記録を突破しながら、決勝は不正スタートで失格した。国立競技場の関係者席から、世界のレースを目に焼き付けた。同じ世界舞台でも、今大会は入賞でも悔しかった。日本陸上界の未来を担うエースは「何年かかってでも、この脚が許す限り、メダルを狙い続けたい」。しっかりと自身の未来を見つめた。(手島 莉子)
◆村竹ラシッドのパリ五輪(5位) 男子110メートル障害で日本勢初の決勝進出を果たすと、13秒21で5位入賞。1932年ロサンゼルス五輪100メートル6位の吉岡隆徳を上回る男子五輪短距離では日本勢の最高順位。表彰台までは0秒12差だった。