◆世界陸上 第5日(17日、国立競技場)

 男子やり投げで予選落ちとなった7月の日本選手権王者の崎山雄太(29)は、珍しい所属先の支えもあって2大会連続の世界陸上の舞台に立った。所属の愛媛競技力本部の正式名称は「愛媛県競技力向上対策本部」。

2007年12月に愛媛県庁内に設立した部署だ。翌年、メンバーに加わった事務局長の辻岡英幸氏(57)は「当時の国体成績が47都道府県中、愛媛は下位でした。10年後の17年に愛媛国体が決まり、競技力を上げて行こうと声が上がりました」と発足の背景を語った。

 競技に特化するのではなく、目指したのは全体の底上げ。全国で上位の競技や、指導者が不在、道具がないものもあり「それに応じた補助金の形で各競技を強化した」という。7年がたち競技力が上がる中、県外からも有望選手を招いて雇用するスポーツ専門員制度ができた。一番の仕事は大会で結果を残すことだが、学校からの要請で訪問指導するなど、県内スポーツの発展に寄与するのも業務の一つ。崎山は日大卒業後の19年より活動。「性格が明るいし、指導もうまい。やりを投げたら子供はくぎ付け。学校からの要請は多い(辻岡氏)」と大人気だという。

 愛媛国体時の52枠から減ったが、地道な普及活動もあって支援する声も多く現在も23人を雇用する。

支援の成果の1つは、東京世界陸上の代表選考を兼ねた7月の日本選手権。崎山が日本歴代2位の87メートル16で初V。「映像で見て、自己ベストを4メートル近く更新したので驚きが大きかったが、うれしかった」と辻岡氏。世界陸上は同僚と現地で見守った。

 異例のサポートを継続し、次なる夢は28年ロサンゼルス五輪。これまでスポーツ専門員から五輪代表を輩出したのは18年平昌冬季大会スピードスケート女子の郷亜里砂の一人。「彼女の活躍で皆さんが応援するようになった。夏の五輪はまだ。何とか出したい」と辻岡氏。崎山やウェートリフティングなどに期待だ。今後もアスリートとともに夢を追い続ける。

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