大相撲秋場所5日目(18日、両国国技館)

 横綱・豊昇龍は東前頭3枚目・熱海富士を寄り切り、5連勝で単独トップに立った。横綱審議委員会(横審)の本場所総見が行われた中、先場所途中休場から復調した姿を見せた。

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 今場所の豊昇龍はひと味もふた味も違う。どっしりとしていて前への圧力が増している。苦手な熱海富士との一番。もろ手で突いてから強烈な突っ張りで相手の体を棒立ちにさせた。左上手を低い位置で取り、右かいなを返して、残る力を完全にそぎ落とした。完璧な横綱相撲でもあった。

 4日目の阿炎との一番でバージョンアップした豊昇龍を見た。仕切りの研ぎ澄まされた迫力と気迫。立ち合いから圧倒された阿炎は逃げるように立ち合いで変化せざるを得なかった。

 不安を一つ挙げるなら張り差しだろう。楽に勝ちたい、簡単にまわしを取りたいと思っての立ち合いだ。豊昇龍の負けパターンは張り差しが根底にある。

小さな大横綱・千代の富士さんの張り差しは記憶にない。横に動いて大きな上手投げはあっても、ほとんどの相手に真っ向勝負を挑んだ。豊昇龍にはこの相撲を続けてほしいと願っている。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

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