◆世界陸上 第7日(19日、国立競技場)
女子やり投げ予選が行われ、昨年パリ五輪覇者で日本女子初の2連覇を目指した北口榛花(27)=JAL=が涙の予選敗退を喫した。36人が出場した予選で全体14位となり、決勝に進む上位12人に残れなかった。
フィールドでぼう然と立ち尽くした北口は、今にも泣きそうな顔になった。一発で通過できる62メートル50に届かず、18人で実施した予選A組は自己ベストに7メートル及ばぬ60メートル38で暫定8位。全体12位以内に入れば決勝進出の中、予選B組の結果待ちとなった。「これ以上超えないでほしい…」。右肘をさすり、祈るような気持ちで結果を待った。しかし、B組の2巡目で2019年大会以来の予選落ちが確定。観衆の声援に応えながら会場を後にしたが、途中で涙が止まらなくなった。「悔しい結果。精神的にも苦しい部分がたくさんあった」。大粒の涙が頬を伝った。
34年ぶり自国開催の大舞台。今大会最多5万8643人の大観衆から大歓声を浴び、予選のトップバッターで登場した。最初の2投は60メートル付近で、最終3投目は50メートル台に力なく刺さった。6月下旬に右肘内側上顆(じょうか)炎のけががあり、全力で投げきる練習が十分に積めなかった。それでも、できる限りの調整を行い全力で戦った。
日本勢の金メダル最有力候補として迎えた今シーズン。けがの影響で7月の日本選手権などは見送り、拠点のチェコで練習を重ねてきた。ただ「投てき練習でこれまでのように(腕を)振り切ることができなかった」と思い通りに進まない。約2か月ぶりの復帰戦となった8月のダイヤモンドリーグ(DL)第13戦(ローザンヌ)は50メートル93の最下位。今季の自己記録に14メートル近くも及ばず、試合後はショックを受けた様子で「ちょっと急いでいるので…」と珍しく直接取材に応じなかった。
前を向いた。「今年は東京で世界陸上があるから、練習に戻ろう」。
21年東京五輪は予選突破も、左脇腹に痛みが出て12位。国立でのリベンジはかなわなかった。それでも「ここで決勝に残れなかったからといって人生終わりだとは思わない。ちょっと長い休みは必要かもしれないですけど、強くなって戻ってきたい」と視線は前を向いている。「世界大会の借りは世界大会でしか返せない」。苦難の壁を乗り越え、また必ず大舞台に帰ってくる。(手島 莉子)
◆北口の世界大会での予選落ち 19年ドーハ世陸(60メートル84)の13位以来2度目。21年東京五輪予選は62メートル06の6位で初の決勝進出(決勝は55メートル42で12位)。22年オレゴン世陸は64メートル32の全体1位で通過(決勝63メートル27で銅メダル)。23年ブダペスト世陸予選は63メートル27で2位通過(決勝66メートル73で金メダル)。
◆やり投げの競技方法 試技は予選が3回。決勝進出(12人)ラインの62メートル50を超えれば一発突破。12人に満たなかった場合はA、B組を合わせた上位12人が決勝に進む。
◆北口 榛花(きたぐち・はるか)1998年3月16日、北海道・旭川市生まれ。27歳。JAL所属。旭川東高、日大卒。五輪は2021年東京大会12位、パリ大会金メダル。世界陸上は22年オレゴン大会で銅、23年ブダペスト大会で金。19年に66メートル00で当時の日本新樹立、23年9月に67メートル38で更新。家族は両親。