大相撲秋場所6日目(19日、東京・両国国技館)

 東前頭16枚目・友風が東同13枚目・明生をはたき込みで破り、5勝1敗とした。右膝などに大けがを負い、一時は序二段転落も経験した苦労人が首位と1差を死守した。

横綱・豊昇龍は西前頭2枚目・王鵬を下手投げで退け、ただ一人の無傷6連勝。横綱・大の里は東前頭3枚目・熱海富士を寄り切り、大関・琴桜は東前頭4枚目・平戸海に小手投げで白星。豊昇龍を8人が1敗で追う。

 友風が会心の相撲を見せた。立ち合いで相手の当たりを受け止め、突っ張って前に出た。突き押しの応酬となったが、攻め手を緩めずに圧力をかけ、相手が出てきた瞬間を逃さず得意のはたき込みで沈めた。「明生関にはけがをする前に全敗(2敗)していた。いいイメージがなかったので、それが逆に良かったのかもしれない」。気負わず臨み、27秒3の熱戦を制した。

 幕内だった2019年九州場所2日目。右膝から土俵下に落下し、救急搬送された。右膝は前・後十字じん帯のほとんどが切れ、太ももの筋肉断裂、半月板や大腿(だいたい)骨も骨折。

再建手術を4度も受けた。7場所連続休場で序二段まで転落したが、23年九州場所で4年ぶりに再入幕。奇跡のカムバックから2度の十両陥落を経て、先場所9勝を挙げ8場所ぶりに幕内に返り咲いた。

 不屈のメンタルを支えるのは、師匠の中村親方(元関脇・嘉風)の存在だ。場所中は取組後と翌朝にミーティングを欠かさず実施。「いい時も悪い時も、心の在り方を言ってくれる」。過去2戦未勝利だった十両・錦富士から初白星の5日目後には「勝ったことのない相手に勝てた。前とは違うんだぞ」と言葉をかけられ、勇気をもらった。

 明生にも3度目の対戦で初白星となった。「けがをする前の方が絶対に強い。それでも一番調子がいい時に勝てなかった相手に、ハンデがある体で勝てた。障害を受け入れて、戦えているということ」と誇った。

現在も右膝から下はしびれが残り、障害者手帳を携帯。取組後は毎日、中村部屋に寄って治療を受けてから自宅に戻る。壮絶な力士人生を送る30歳が、秋の土俵を沸かせる。(林 直史)

 ◇友風想大(ともかぜ・そうだい)

▽本名 南友太

▽生まれ 1994年12月2日、川崎市▽サイズ 185センチ、179キロ

▽運動歴 空手バスケットボール、柔道などの経験を経て神奈川・向の岡工高で本格的に相撲を始め、日体大に進学

▽入門後 2017年夏、当時の尾車部屋から初土俵。18年九州、新十両。19年春、新入幕。19年名古屋場所では年6場所制以降で最速タイ(幕下付け出しは除く)の所要14場所目で初金星。二所ノ関部屋を経て24年6月から中村部屋所属

▽趣味 ピアノ。小学生時代に「天才」として騒がれ、一時は音大進学を目指したほど。小学校の時に作曲したメロディーは卒業後も運動会の時に使用された。好きなミュージシャンはリチャード・クレイダーマン

▽座右の銘 ケガの功名▽応援するチーム サッカー・J1川崎、バスケB1の川崎ブレイブサンダース

▽得意 突き、押し。

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