◆JERAセ・リーグ 中日2―6ヤクルト(19日・バンテリンドーム)

 鳴り止まない「中田コール」に、こらえていた涙があふれた。今季で現役を引退する中日・中田翔内野手(36)が、5月11日の阪神戦(甲子園)以来のスタメン。

4番で迎えた初回2死一塁。最後はど真ん中の147キロを強振した。直球3球で空振り三振。慢性的な腰痛が引退の決め手にもなった通算309本塁打のアーチストは、フルスイングで別れを告げた。「久々に気持ちのいいスイングができた。野球を大好きな気持ちでやめられる」。思い切り涙を流した後の表情は晴れやかだった。

 この日は、中田以外の全選手がオリジナルTシャツを着用。球場には巨人・坂本、岡本らから届いた約140の花束が通路を埋め尽くした。「ありがたいね」。18年間の現役生活を振り返るように、ゆっくり歩いた。まな弟子のソフトバンク・秋広から贈られたバラ100本には「パパへ これからは僕がご飯奢(おご)ります」のメッセージが添えられていた。

「ふざけてるな」と鼻で笑ったが、表情は穏やかだった。

 試合後のセレモニーでは、元同僚のダルビッシュらからのビデオメッセージが流れた。とめどなく流れる涙を拭った後、「(大谷)翔平から、ないのがおかしいけど」と笑いを誘った。サプライズで花束贈呈に登場した恩師の日本ハム・栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサーとは熱く抱擁した。最後は歓声に沸くマウンドで、背番号と同じ6度、宙を舞った大将。フルスイングを貫いた姿は、ファンの記憶に色濃く刻まれた。(森下 知玲)

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