バレーボール 大同生命SVリーグ女子 チャンピオンシップ決勝 第2日(26日、横浜BUNTAI)

 2戦先勝で争うチャンピオンシップ(CS)決勝が行われ、元日本代表の中田久美監督が率いるレギュラーシーズン(RS)2位のSAGA久光が、SVリーグ初優勝を飾った。大阪Mに3―0で2連勝し、前身Vリーグ時代を含めれば、2021―22年季以来、4季ぶり9度目V。

10季ぶりに監督復帰し、1季目で頂点に導いた「闘将」は、令和の指導改革を行っていた。

 第3セット、チャンピオンシップポイントから大砲・サムデイのスパイクで初優勝が決まると、中田監督は静かに左拳を握った。そしてベンチで選手をハイタッチで迎え、柔らかな笑みを浮かべた。「一番はホッとしています。勝ったうれしさは3割。ここ数年優勝から遠ざかって、悔しい思いを選手たちから感じていた。最後は負けたくないという思い。彼女たちの汗と涙の結果だと思います」と選手の奮闘を誇った。栄絵里香主将は「勝ったぞ~!」と感涙しながら、3666人の大観衆に向かって叫んだ。

 「やられたらやり返せ!」という言葉を胸に、チームは1つになった。19日の準決勝でPFUに敗戦後、中田監督が選手に伝えた言葉だ。MVPに輝いた守護神・西村弥菜美が右手甲を伸ばして拾い上げる「パンケーキレシーブ」で沸かせると、11得点のエース格・北窓絢音が「今日はとにかく攻める」と難しいハイセットから決めた。

13得点の中島咲愛も多彩な攻撃で奮闘。3セットを通して、劣勢の場面でも、全員が弱気にならず1点を取りに行った。

 昨季3位に終わったチームの再建へ、中田監督が優勝した15―16年季以来、10季ぶりに指揮を執った。かつては厳しい指導から「闘将」と呼ばれたが、令和の現代に応じて指導改革。10季前に指導を受けていない「Z世代」に対し、大事にしたのは対話だ。昨夏のチーム始動時に全選手と個別面談。21歳の北窓は「エースになりたい」と伝えた。「では、エースになるにはどうしたらいい?」と問い続け、一緒に正解を探した。さらにアドバイスを可視化するためにレポートにまとめて、選手それぞれに手渡したりもした。

 前回を唯一知るベテランの栄主将は「バレーボールに対する考え方や勝負勘は変わっていない印象。でも、今は若い選手が増えて、監督から選手に声をかけて、コミュニケーションを取って下さっているなと思いますね」と変化を語った。北窓は「最初は厳しそうだなと思ったけど、久美さんはフレンドリーですね。

他愛もない話もしてくれますし。それに悩んでいる時に一番欲しい言葉をくれますね」と信頼を口にした。

 中田監督自身は「私ももう還暦なので、丸くなったんだと思います」と苦笑いしつつ「(若い)彼女たちも考えてなさそうで、いろんなことを真剣に考えて取り組もうとしている部分もよくわかって。ダメなものはダメと軌道修正するけど、認めてあげることも大事だと思います。何をすべきは考えてもらって、(課題と)向き合わせるのも大事」と若い世代の自主性を引き出し、成長につなげてきた。

 21年の東京五輪1次リーグ敗退で「挫折」を味わった。それでも「人生の中で無駄にしたくない。この年で必要とされるのはすごく幸せなこと。一人でも日本代表、世界に踏み出してほしいし、自分の経験を次世代に伝えたい」との決意を胸に帰ってきた。RS44試合とCSでは7試合の計51戦の長い戦いを終えたばかりで少し疲れがにじむが、早くも来季を見据え、「優勝しかないですね」と連覇を力強く掲げた。“令和の闘将”が、新たな指導術で若い世代を育て、強くしていく。(宮下 京香)

 ◆中田 久美(なかだ・くみ)1965年9月3日、東京都出身。

60歳。「天才セッター」と呼ばれ、15歳で全日本初選出。81年、日立入社。84年ロサンゼルス五輪銅、88年ソウル五輪4位、92年バルセロナ五輪5位。引退後は、イタリア・セリエAのコーチなどを経て、2012年に久光製薬(現・SAGA久光)監督に就任。4年間でVプレミアリーグ3度優勝。16年に翌年に退任。同年、女子日本代表監督に就き、21年東京五輪を指揮。176センチ。

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