現在、東京・歌舞伎座の「團菊祭」(27日千秋楽)で襲名披露中の尾上左近改め3代目尾上辰之助(20)が、開幕してからインタビューに応じた。世代の異なるスポーツ報知の歌舞伎担当記者が、辰之助の知られざるエピソードを紹介。

意外な素顔を通じ、辰之助の魅力に迫ります。

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 翌月に父の松緑と共演する「連獅子」を控えた2023年3月。17歳の辰之助(当時は左近)は「連獅子」での役柄と実際の親子関係を重ねて感極まり、涙ながらに取材に応じた。

 12歳で父(初代辰之助)、14歳で祖父(2代目松緑)を亡くしている父の松緑が「いつ自分が死んでも、いいように息子を育てている」と語った。その言葉が胸に刺さり、秘めた思いがあふれ出した。辰之助は「曽祖父も祖父も大好きですけど、それ以上に父に憧れています。僕は父の子で、最初に歌舞伎が面白いな、格好いいなと思ったのは父の姿を見た時。父には絶対、長生きしてほしい」と声を震わせた。何のてらいもない純粋さに心が洗われた。

 昨年1月の新春浅草歌舞伎も印象深い。開幕前の鏡開き。劇場前の観衆を前に、緊張した様子で「初出演になります」と言うべきところを「はちゅしゅちゅえんになります」となり、爆笑を誘った。

数日後、楽屋で「あれは計算です。笑いを取りにいきました」と教えてくれた。ユーモアと度胸で人々の心をガッチリとつかみ、スターが誕生した瞬間を見た思いがした。

 純粋さと感受性の豊かさが、役の理解度の高さにつながっている気がする。日常生活でも「これをしたら相手がどう思うか」「人の目にどう映るか」を常に意識しているという。技術だけに頼らず、心をフル稼働しているからこそ、共感を呼ぶ演技ができるのだろう。赤姫から荒事まで演じられる唯一無二の役者になることを期待している。(有野 博幸)

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