北中米W杯の1次リーグで、日本代表は6月25日にFIFAランキング38位、過去対戦1勝3分け1敗のスウェーデンと2002年の国際親善試合以来、24年ぶりに対戦する。母国開催の1958年大会では準優勝、1994年米国W杯での3位、18年ロシアW杯のベスト8など、限られたタレントを組織力で最大化させてきた北欧の雄。

かつてはFWイブラヒモビッチという絶対的な「王」が君臨したチームは今、どのような変革を迎えているのか。浦和の元スウェーデン代表FWイサーク・キーセ・テリン(33)の言葉から、スウェーデンサッカーの新たな哲学と、日本が警戒すべき「盾と矛」の正体を探る。(取材・構成=金川 誉)

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 母国スウェーデンと、現在プレーする日本。テリンはこの対戦を「非常に楽しみな好ゲームになる」と目を細める。彼が両国に感じている共通のキーワードは「献身性」だ。

 「我々スウェーデン人には、自分よりもチームのためにという哲学が根付いています。日本人もまた、チームのためにハードワークし、謙虚である。この精神性は非常に似ていますね」

 スウェーデンには「ラーゴム(Lagom)」という言葉がある。多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい調和を尊ぶその精神は、和を重んじる日本人の気質にも通ずるものがあるという。

 かつて「堅守」のイメージが強かったスウェーデンは今、育成の段階から大きな変化を遂げている。

 「僕らの世代は守備の仕事を叩き込まれましたが、今の若手は得点すること、ボールを保持しコントロールすることにフォーカスして育っている。国内に新しい風が吹いています」

 その象徴がトットナムのMFベリバル(20)ら欧州ビッグクラブで輝く若き才能たちだ。

 現在のスウェーデン代表を語る上で欠かせないのが、欧州を席巻する強力な前線だ。テリンが「今の強みは間違いなく攻撃にある」と断言するように、アーセナルFWヨケレス、リバプールFWイサクとプレミアの強豪でプレーするふたりのストライカーコンビは、世界屈指の破壊力を秘める。

 「ヨケレスの魅力はゴールへの飢え。スピードとパワーを兼ね備え、ゴールへの最短距離をハントする。一方のイサクは非常にテクニカル。予選はイサクを負傷で欠きましたが、ポッター監督はこの2人を共存させるために、イサクを少し引き気味の10番に置くか、ツートップにするかのソリューションを見つけ出すはず。日本にとっても非常に怖い存在になります」

 かつてのスーパースター、イブラヒモビッチがいた時代は「彼に預ければ勝てる」という特権的な文化があったが、今は違う。

 「今のスターたちは、チームのために泥臭くハードワークもこなす。より組織として機能しているのが今のチームです」

 一方で、テリンは母国の弱点も冷静に分析する。それは、長年の武器であったはずの守備の不安定さだ。 「スタイルを大きく変えようとした過程で自信が揺らぎ、予選では苦戦しました。今は5バックを採用して守備を固め、なんとか予選を突破した段階です。

本番で4バックに戻すのか、それとも伝統的な『守備重視』のスタイルを貫くのか」

 テリンの予想では、この試合の主導権を握るのは日本だと見ている。

 「日本は常に素晴らしいチームに仕上がっており、おそらく日本がボールを支配する展開になるでしょう。対するスウェーデンは、低い位置でブロックを作り、ヨケレスたちのためにカウンターのスペースを狙う。これがメインプランになるはずです」

 日本が最も警戒すべき点として、テリンは意外なポイントを挙げた。それは、コーチングスタッフによる「セットプレーの緻密さ」だ。

 「今の代表には、ユベントスやトットナムで指導したセットプレー専門のコーチがいます。ここは日本にとって非常に警戒すべきポイント。流れの中から崩せなくても、セットプレー一本で試合を決める力を持っています」

 スコア予想を聞くと、「3―3のドロー」と答えた。

 「スウェーデンの得点者はイサクとヨケレス。両チームとも予選を突破してほしいですからね」

 知略と個の力を兼ね備えた北欧の雄。日本が勝利を手にするためには、スウェーデンの誇る「矛」のカウンターを封じ、伝統の「盾」に潜む隙をどう打ち破るかが鍵となる。

 ◆スウェーデン代表 2大会ぶり13回目のW杯出場。

最高成績は1958年(自国開催)の準優勝。昨年10月にグレアム・ポッター監督(51)が就任。北中米W杯に向けた欧州予選はB組最下位に沈むも、ネーションズリーグ枠で滑り込んだプレーオフでウクライナ、ポーランドを破り本大会切符をつかんだ。

 ◆イサーク・キーセ・テリン 1992年6月24日、スウェーデン生まれ。33歳。カールスルンドでプロデビューし、11年にノルシェーピン、14年に名門マルメへ移籍。同年、スウェーデン代表にデビュー、15年にフランスのボルドーに移籍。18年ロシアW杯出場。25年8月に浦和加入。192センチ、94キロ。

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