女優の岩下志麻(85)が30日、東京・渋谷のBunkamuraル・シネマ渋谷宮下で行われた「映画監督 篠田正浩 レトロスペクティブ」のトークイベントに出席した。

 昨年3月に亡くなった夫・篠田正浩監督(享年94)の残した作品を未来へつなぐプロジェクトで、この日が特集上映企画の第1弾。

夫の没後初めて公の場に姿を見せた岩下は、拍手を浴びながら登壇した。

 イベントでは、岩下が主演に抜てきされた1960年公開の篠田監督作「乾いた湖」を振り返り「あれは運命の出会いだとつくづく思いますね。あれがなかったら今の私はない」と繰り返した。

 篠田作品について「必ず自己主張を持った作品だっ」と述懐。2人が結婚した67年から独立プロダクション「表現社」をともに運営した日々を「私たちの結婚生活は、映画を追っかけた魔物退治の生活だったとつくづく思いました」と振り返った。

 昨年に最愛の夫を亡くし「喪失感が大きくて、気力が全然なくなった。死ぬことばかり考えていた」と本音を吐露。映画人生の本を書くために、2人が関わった映画22本をDVDやビデオで見ることで「少しずつ元気が出てきて、かなり前向きに気持ちをもっていけるようになった」と現状を語った。

 晩年は執筆の仕事が多かった篠田さんとほとんど一緒に過ごした岩下は「今はテーブルが広すぎて、そこに篠田がいないのはすごく寂しい」。公私で頼りにしていた夫は、最晩年の入院時も10歳年下の岩下に「テレビの仕事がきたら絶対にやりなさい」と助言していたそう。「篠田は私が女優をしているのがすごく好きだった」とつぶやき、身の回りの出来事を毎日仏壇に報告していることも明かした。

 最後のあいさつでは「篠田は類いまれなる才能の持ち主だった。

優しいし、思いやりはあるし、素晴らしい人間と58年間も一緒に暮らせて本当に幸せだった」と声を詰まらせていた。

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