【ナッシュビル(米テネシー州)27日=金川誉】

 日本代表は29日(日本時間30日)の決勝トーナメント1回戦・ブラジル戦に向け、異例の“冒頭非公開”で調整を行った。

 通常、代表練習は冒頭15分ほどをメディアに公開するのが通例だ。

しかし、激闘となった1次リーグ第3戦スウェーデン戦から中3日のブラジル戦。疲労回復を最優先するチームは、この日の練習強度を上げることができない。そこで選手たちは、負荷をかけない「歩くほどのスピード」で各ポジションに立ち、パスを回しながらブラジルのスカウティングデータに基づいた攻撃の狙いや対策を緻密に確認した模様だ。

 練習後のミックスゾーン。選手たちが口にしたのは、セレソンのエース、FWビニシウス対策だった。

 「ビニシウス選手は、守備はあまりしないで前に残ってカウンターを狙ってくる。そのため(日本が)コンパクトさをキープできなくなったり、攻めることはできるけど、後ろが空いてしまったりすると思う。そのリスク管理をしないと、難しい試合になる。そこにどれだけ人数をかけてやるのかが大事」

 MF鎌田大地がそう警戒を強める通り、1次リーグ3試合で4ゴールを叩き出しているブラジルの背番号7が放つ存在感は強烈だ。左サイドからのスピードあふれるドリブルと、高精度のフィニッシュは驚異だ。だが、日本の選手たちはおびえているわけではない。DF板倉滉は「彼をフリーにさせないリスク管理は当然」とした上で、逆説的な勝機を口にした。

 「(ブラジルは)攻撃に全振りしたい選手が多い。守備の局面で言えば、自分たちのビルドアップや攻撃がつけ入る隙は必ずある」

 全員がハードワークする日本とは対照的に、前線にタレントを残して牙を研ぐブラジル。日本はカウンターを受ければ致命傷になりかねないが、それを未然に防ぎ、ボールを握ることができれば、逆に数的不利に陥るブラジル守備陣の脆さを突くことができる。

 となれば、この大一番の命運を握るエリアは「日本の右サイド」だ。まずはビニシウスと対峙(じ)する右ウイングバックのMF堂安律、そして右センターバック(CB)に入るであろうDF冨安健洋(または渡辺剛)が、いかに前を向かせず自由を奪うか。さらに、右ボランチの佐野海舟や右シャドーの伊東純也らも含めた、組織的な網の構築が不可欠となる。

 しかし、真の勝負はそこからだ。ビニシウスが守備に戻らないということは、日本の右サイドが攻撃に転じた瞬間、ブラジル陣内にスペースが生まれる。ここで鍵を握るのが、右CBのビルドアップ能力と攻撃参加だ。1次リーグのチュニジア戦でも、的確な縦パスで攻撃のスイッチを入れた冨安のクオリティーは、ブラジル攻略への特効薬となり得る。

 ビニシウスという「最大の脅威」を逆手に取り、いかに「最大の勝機」へと昇華させるか。日本の右サイドが繰り出す矛と盾のクオリティーが、森保ジャパンの命運を左右する。

(金川 誉)

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