TBSラジオ『蓮見孝之 まとめて!土曜日』毎週土曜日内で8時20分頃から放送している「人権TODAY」。

今回のテーマは…がん患者やその家族の相談に無料で対応する施設「マギーズ東京」の新型コロナ禍での取り組み

「マギーズ東京」とは…

2016年10月にオープンした「マギーズ東京」のことは、「人権TODAY」でも今から4年ほど前に取材しています。おさらいになりますが、がん医療が進展し、必ずしも不治の病ではなくなった中でスタートしたこの施設の狙いについて、「マギーズ東京」センター長で共同代表理事の秋山正子(あきやま・まさこ)さんに伺いました。

▼「マギーズ東京」センター長・共同代表理事の秋山正子さん

がん患者の相談に対応する「マギーズ東京」新型コロナ禍での取り...の画像はこちら >>

「がんと共に歩む時間が長くなると、外来中心ですので、医療者とゆっくり話をしたり、そういう相談する場所というか、時間も取れない。でも逆に思い悩む時間が長くなっているので、病院と家の中間に在る「第2の我が家」っていうんですけど、ゆっくりとお話を聞きながら、問題の整理をするという場所が、必要な時代になったというところだと思います。」(「マギーズ東京」センター長・共同代表理事秋山正子さん)

「マギーズ東京」が居を構えるのは東京・江東区。卸売市場もほど近い豊洲の地です。施設はウッディな平屋建てで、ガーデニングなどにも凝った、リラックスできる空間になっています。

▼東京・豊洲の「マギーズ東京」施設

がん患者の相談に対応する「マギーズ東京」新型コロナ禍での取り組み

運営資金は寄付や助成金、チャリティイベントなどで担っており、この場を訪れたがん患者やその家族を迎えるのは、看護師を中心に、心理士や栄養士などの専門家。前向きに進んでいく力が持てるようにサポートを行ってきました。

新型コロナ禍ががん患者とその家族を直撃

ところがおととしの春、日本列島を襲った新型コロナ禍によって、「マギーズ東京」も、一時的に閉館せざるを得なくなりました。そしてコロナ禍は、がん患者の置かれた環境も直撃したのです!

「手術が少し先延べされた。それから診断を聞きに行く時間も少し先の予約だったり、色々なことで待たされてる時間、独りで考えている。そうするとネットサーフィン、みんな情報を集めようとしていて、不安材料しか見ていない。どんどんどんどん穴に落ち込むように不安になる…。」(「マギーズ東京」秋山正子さん)

病院にもなかなか行けず、患者の集うサロンのような会も次々と中止になって、がん患者の中には、誰かに話を聞いてもらうことも出来ない、ホントに孤独な闘病生活を送らざるを得なくなった方が多くなったわけです。またがん患者の家族も、精神的に辛いダメージを受けるケースが頻出するようになりました。

「がんで家族を亡くした人の、まったくホントに面会ないまま、あっと言う間に亡くなってしまい、もう喪失感がホントに、誰も慰められないというのか。

そういう状態で、どこへも話ができないというか、そんなことが結構ありまして…。」(「マギーズ東京」秋山正子さん)

がんで家族を亡くした方に対するケアの問題、いわゆるグリーフケアというものは、欧米などと比べて日本では取り組みが遅れ気味と言われてきました。それがコロナ禍で、更に深刻化したわけです。

「マギーズ東京」コロナ禍での新しい取り組み

元々はリラックスできる空間で患者を迎えていた「マギーズ東京」ですが、おととし一時的な閉館の際にも、相談窓口を閉じることはしませんでした。具体的には、電話やメール、オンラインでの相談にも対応するようになったのです。深刻な孤独感を抱えている患者の方からの相談の電話への対応は、大体1時間以上を要するとのことです。またがんで家族を亡くした方からの電話も相次ぎました。

元々相談者の中で、がん患者の家族が占める率は4%程度でしたが、今では6%まで増えたということです。

▼オンラインで相談活動を行う「マギーズ東京」スタッフ

がん患者の相談に対応する「マギーズ東京」新型コロナ禍での取り組み

コロナ禍が長引く中で、オンラインも重要な活動の場となってきたわけですが、こうした活動は、相談だけには止まりません。リアルな場で行っていた、グループを作ってのプログラムを、オンラインでも実施するようになったのです。

「「リラクゼーション」といって、がんと闘ってる人たちって知らず知らずに緊張しているので、それをどういう風に自分の身体をほぐしていくかっていう、そういうテーマなので、そこを目掛けたグループ。それから「ストレスマネージメント」という心理士がやるクラスもありますし、あと栄養士がやるのは、「食事と栄養」というクラスがあるし。あとは「アピアランス」というか、そういう抗がん剤の途中で脱毛があったり、色んな皮膚の変化があったりするところを、そのスペシャリストが対応するので。」(「マギーズ東京」秋山正子さん)

▼オンラインで「リラクゼーション」プログラム実施中の「マギーズ東京」スタッフ

がん患者の相談に対応する「マギーズ東京」新型コロナ禍での取り組み

コロナ禍でがん患者も運動不足になって、室内で転び易くなるなどの問題が起きています。

その予防に、身体を動かすプログラムを利用するのも、良いと思います。

さて秋山センター長は、コロナ禍でオンラインの活動を本格化させたことを、こんな風に前向きに評価しています。

「オンラインになって良かった点は、遠方の人も参加できるということです。以前リアルの時に、直接こちらに来て参加していた人が、カナダからでも参加が出来るということでオンラインで参加してるんですね。それから、関西方面とか、それから北海道の方とか。」(「マギーズ東京」秋山正子さん)

「マギーズ東京」では、今後コロナ禍が収束に向かった場合、もちろんリアルでの相談対応を重視しながらも、オンラインでの相談対応も、続けていく方針です。現在ベターな態勢を組むために、様々な検討を行っています。