竹内映二氏「日本人は“勤勉”な所が武器。あと少し…」


2005年から2012年までデビスカップ日本代表監督を務めた竹内映二氏。
現在は、自身が主宰する「竹内庭球研究所」(テニスラボ)で日比野菜緒(ブラス)や加藤未唯(ザイマックス)らの選手指導に当たっている。日本人選手の武器、そして世界で活躍するためのあと一つのピースとは何になるのか聞いた。

――帯同した加藤未唯選手が女子ダブルスで久しぶりの勝利を挙げられました。

「(第1セットの)トータルミスが3本だったので、ほぼ完璧な立ち上がりでした。(マイアミ・オープン準優勝後の)3月から彼女は勝っていないので、今日は久しぶりに喜びを感じたのではないでしょうか。試合の前には、『勝ち負けなんて関係ないからもっと自分らしさをコートで出そうよ』という話をしました」

――明るく楽しい元気な雰囲気が観客にも伝わるダブルスでした。

「自分らしさが出ないと後味の悪い勝利になるし、それをコートで発揮できればお客さんも喜ぶ。本人もリズムに乗ってくるので、あまりたくさんのことは言いませんでした」

――選手には勝てない時期もあると思います。アップダウンがある中で、竹内さんが考える“自分らしさ”とは何でしょうか。

「ダブルスは、自分の調子が良くてもパートナーが良くなければ勝利には結びつかないので、パートナーのせいにしがち。ですが、自分がベストを出せたかというと必ずしもそうでないと思います。自分がある程度パーフェクトな試合をすれば、パートナーも思い切ったことができるし、(加藤選手のように)デュースサイドのプレーヤーだとすれば、(ゲームを左右する上で)すごく大切なことです」

――世界のテニスの動向について、竹内さんがデビスカップ日本代表監督を務められていた時はフェデラーやナダルの最盛期でした。
それから今のテニスの変化について、女子も含めてどのように見られていますでしょうか。


「初戦から(グランドスラムの)シードダウンがたくさん見られますよね。女子も簡単ではありません。みんな1回戦からすごくタフな試合をしています。そういう意味で2週間を勝ち残っていくというのが難しく、ともすれば誰もがチャンピオンになり得る状況になってきたのかと思います」

「フィジカル面も技術面も上がってきました。指導者、グラスルーツ(草の根運動)も他の国がどんどん良くなってきているのだと思います。それによってみんなが小さい頃からテニスを始めて育ってきている。以前は女子のフォアハンドが男子に比べると良くなかった傾向にありましたが、今はフォアハンドが攻撃的になって良くなり出している。男子もストロークだけが中心だったのがネットに出ていくことが増え、ボレーも非常に上手くなったと思います。そういう意味では、徐々に選手の欠点がなくなってきているように感じます」

――技術的に下手な選手がいなくなった、という印象があります。パワー化の中で日本人選手は世界のスピードに対応できているところはあるのでしょうか。

「例えば、何割かは(ボールに対する繊細な)優れたタッチや、動きが勝っていたり、エラーの少なさで補足できていると思います。
必ずしもパワーテニスだけが生き残るというわけではなく、その中でも背の低い選手が頑張ってくれています。そこがテニスというゲームの見どころであり、面白さであると思います」

――日本のテニスが世界に通用する、という要素として竹内さんは何を挙げられますか。

「もちろん“武器”は必要ですね。そして、特に日本人においては、ショットだけではなく“メンタルの安定性”、それから“勤勉”なところが武器です。外国の選手は荒々しくアグレッシブなプレーをします。そこで日本人の“武器”である集中力が長く続くこと、勤勉で安定感が際立ってくる。もう少し攻めのショットがあればトップに食らいついていけるのではないでしょうか」

「これからは満遍なく何でもできるというのではなく、特徴が必要になってきます。自分にポジティブであること、自分に能力があると信じてやれば必ずチャンスは来ると思います」

――希望あるお言葉をいただきました。貴重なお話をありがとうございます。
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