先週の日経平均株価は、米国の利上げペース鈍化期待から週前半に上昇。週後半は米ビッグテック企業の悪決算で下落しましたが、前週末比214円高とプラスで終了。
先週:ビッグテック急落も利上げ鈍化期待で全体相場は上昇!
中国で習近平国家主席が異例の3期目に突入したことを不安視して、香港ハンセン指数が週間で8%安となるなど、中国株の急落で始まった先週の株式市場。
またもや暗い展開になるかと思いきや、皮肉にもそれを救ったのは、米国の景気減速を示唆する弱い経済指標でした。景気鈍化が明確になると、米国の株価下落の元凶だった強硬な利上げペースの緩和が期待されるからです。
24日(月)発表の10月の米製造業PMI(購買担当者指数)では好不況の分かれ目である50を下回り、サービス業PMIも悪化しました。25日(火)発表の8月全国住宅価格指数も前月比0.9%下落しました。
28日(金)発表の9月の米PCE(個人消費支出)物価指数は、エネルギーと食品を除くコア指数が前年同月比5.1%上昇と、依然高い伸びですが、予想をやや下回りました。
こうした弱い経済指標の発表を受け、米国の長期金利の指標である10年国債の利回りも4.2%台から4.0%台まで低下。
1週間で5.7%も上昇したダウ工業株30種平均を筆頭に、米国株は大幅上昇して終わりました。
景気が鈍化しても旺盛な需要が見込める マクドナルド(MCD) 、ディフェンシブ色の強い医薬品の メルク(MRK) 、軍需株の ロッキード・マーチン(LMT) などは、史上最高値を更新。
一方、米国のビッグテックと呼ばれるGAFAMは、 アップル(AAPL) 以外の4社が予想を下回る決算発表となり、フェイスブックの親会社 メタ・プラットフォームズ(META) が前週比24%安、 アマゾン・ドット・コム(AMZN) が13%安。
ここ10年近く米国株の上昇をけん引したGAFAMですが、成長が止まってしまえば、ただの会社に過ぎません。
今年に入って株価が7割も下落したメタをはじめGAFAMの株価がさえなくても、全体相場が上昇するのは、世界の株式市場で主役が交代するシグナルかもしれません。
先週の日本株では、2023年3月期の業績を上方修正した半導体パッケージメーカーの イビデン(4062) が前週比21%高となるなど、好決算企業の株価が上昇。
米国でアルツハイマー治療薬の開発進捗(しんちょく)が報じられた エーザイ(4523) が週間で6%以上上昇するなど、医薬品セクターの値上がりも目立ちました。
今週:FOMCで利上げ様子見発言が出れば急騰!?円安一服の可能性も
今週一番の注目は、米国の金融政策を決める11月2日(水)終了(日本時間は3日未明)のFOMC(米連邦公開市場委員会)です。
今回の会合では0.75%の利上げが予想されています。
これで、米国の短期金利の指標となるFF(フェデラル・ファンド)レートの上限はついに4%に到達する見込みです。
FOMC終了後の記者会見で、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が利上げペース鈍化に明確に言及すれば、株価の大幅上昇に期待できるでしょう。
FOMC前の1日(火)にはISM(米サプライマネジメント協会)の10月製造業景気指数も発表。緩やかな景気減速が確認されれば、株価にとっては追い風でしょう。
4日(金)には10月の米国雇用統計も発表されます。
非農業部門雇用者数は、活況の目安とされる月20万人増を切る水準まで低下すると予想されています。
逆に雇用者数に急ブレーキがかかると、先週は株価に好影響を与えた景気減速の兆しが深刻視され、株価下落につながる恐れもあります。
国内では、10月31日(月)夜に財務省が「外国為替平衡操作の実施状況」と題し、10月の為替介入額を公表。
政府・日本銀行が大規模為替介入したこともあり、先週のドル/円相場は一時1ドル145円台まで下落しました。
ただ、急速な円安が止まったのは、米国で弱い経済指標の発表が相次ぎ、金利の先高観がしぼんだことが主因でしょう。
11月1日(火)には トヨタ自動車(7203) や ソニーグループ(6758) が決算発表を行います。
トヨタ自動車は9月の自動車世界生産が部品不足の緩和で単月としては過去最高を記録。円安効果で好決算を発表すれば、株価続伸に期待できます。
11月の株式市場は、年末高に向けて上昇するのが毎年恒例になってきました。
来週11月8日(火)投開票の米国の中間選挙で、株高になりやすい共和党優勢が報じられているのも追い風かもしれません。
今後のベストシナリオは、米国の物価高がピークを打ち、金利上昇が止まること。
そうなれば、日米の金利差による円安トレンドも自然と収まりますが、米国の物価高騰の沈静化はそれを補って余りある株高要因になるでしょう。
FRBのここまでのハイペースな利上げが、米国の景気をオーバーキル(過剰に失速)させる懸念が出てくるのは、もう少し先かもしれません。
(トウシル編集チーム)