週末の米イラン和平協議は決裂、さらにはトランプ大統領によるホルムズ海峡の海上封鎖表明が行われましたが、第2回協議に向けて期待が高まっています。和平協議の行方が見えるまでは動きづらい相場が続きそうですが、利上げへの慎重姿勢が続いており、和平が成立してもしなくても注意が必要です。


米イラン和平協議決裂も第2回協議に期待か?!の画像はこちら >>

和平協議は決裂も第2回協議に期待?

 週末の米国とイランによる停戦協議は合意に至らず、トランプ大統領がホルムズ海峡の全面的な海上封鎖を開始する(日本時間13日午後11時開始)と表明しました。


 週明け、原油(ウエスト・テキサス・インターミディエート[WTI])は105ドル台に上昇し、ドル円は159.80円近辺で円安にギャップオープンしました。先週、円安を先導したユーロ円などのクロス円は円高にギャップオープンしました。日本の10年債利回りは一時2.49%と1997年6月以来、約29年ぶりの高水準を付けました。


 ドル円は159円台後半にギャップオープンしたものの160円台に乗せる勢いはありませんでした。第1回和平協議は決裂したものの、停戦期限の4月21日(米国東部時間)に向けて第2回和平協議への期待が残っていたからかもしれません。


 相場は和平協議の成り行きを見極めるまでは引き続き動きづらい相場になりそうだと思っていたところ、13日、トランプ大統領が「イラン側から連絡があり、彼らは合意を強く望んでいる」と述べたことから、159円台前半へ円高に行きました。


 しかし、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ホルムズ海峡の逆封鎖のために15隻超の米艦がホルムズ海峡周辺に展開していると報じています。また、イランへの限定的な軍事攻撃の再開を検討しているとも報じています。


 米国による逆封鎖やイランへの限定攻撃再開は懸念材料です。ホルムズ海峡でイランとの交戦や限定攻撃による報復攻撃で戦火が拡大すれば、和平協議は完全決裂となり、ドル円は再び160円台に上昇する可能性があります。ただ、今のところは、米国もイランも冷静な対応をしており、和平協議再開への期待が高まっています。


 14日、トランプ大統領は「イランと2日以内に再協議する」と発言したため、第2回和平協議が今週にも行われるとの思惑が広がり、原油(WTI)は90ドル以下に下落し、ドル円も158円台後半の円高となりました。


 ただ、ユーロ円は連日過去最高値を更新するなど円安の動きとなっています。先行きに対する楽観的な見通しが広がり、有事のドル買いの巻き戻しによってユーロやポンドなどが買われ(ドル売り)、ユーロ円やポンド円などクロス円の円安地合いが続いています。そのためドル円の円高も抑制的な動きになっています。


日銀の利上げ慎重姿勢は続く?和平協議が合意でも要注意

 国際通貨基金(IMF)は、14日、2026年4月の「世界経済見通し」を発表しました。今年2026年の経済成長率は、イラン情勢を受けたエネルギー価格の高騰によって+3.1%となり、前回(1月)から0.2%下方修正されました。イラン攻撃がなければ0.1%の上方修正となるはずだった(+3.4%)との見解も示しています。


 2026年の消費者物価は4.4%の上昇となっており、1月時点から0.6%の上方修正となりました。


 国別では、2026年の米国国内総生産(GDP)は+2.3%(前回比マイナス0.1%)、ユーロ圏+1.1%(同マイナス0.2%)。日本は高市政権の景気刺激策などで内需が堅調とし、+0.7%で据え置きとなりましたが、IMFは日本銀行が予想よりも急激なペースで利上げを行う可能性が高いとも指摘しています。


 これらの見通しは紛争に伴う混乱が2026年半ばに収束に向かうとの前提で予測しており、紛争が長期化し、エネルギーインフラが深刻な被害を受けるなど影響が拡大した場合には、+2%程度まで落ち込むと予測しています。被害が出ている中東に加え、燃料を輸入する欧州や新興国などがより影響を受けると指摘しています。


 10日、米4月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は過去最低の47.6と前月53.3から急低下し、予想の52.0も大きく下回りました。

米・イラン停戦合意成立前の調査回答ですが、和平協議決裂によってさらに悪化している可能性もあります。


 さらに10日には米3月消費者物価指数(CPI)が発表されました。予想を下回ったとはいえ、前月からは加速しています(前年比+2.4%→+3.3%)。コアCPI(除く食品・エネルギー)は前年比+2.6%と、前月の+2.5%からわずかな伸びにとどまっていますが、国民の生活実感はエネルギーを含めたCPIです。


 米国は原油の輸出国とはいえ、中東情勢によってガソリン上昇が続いています。ガソリンの上昇は旅行や移動を抑制するだけでなく、消費も抑制的な行動にさせます。


 IMFはイラン情勢が今年半ばには収束に向かう前提で予測していますが、原油(WTI)が紛争前の70ドル台に落ち着いていかないと、米国GDPの7割を占める米国民の消費者心理は上向かないかもしれません。


 9日に発表された2025年10-12月期の米国GDPは+0.5%と改定値から0.2%下方修正されています。個人消費と住宅投資が下方修正されました。アトランタ連邦準備銀行のGDPNowは1-3月期GDPを+1.3%で予測していますが、IMFの+2.3%にはまだ遠い状況です。


 日本についてIMFは、日銀の利上げペースが速まる可能性を指摘していますが、13日の日銀植田和男総裁の講演(総裁欠席のため氷見野良三副総裁の代読)では、中東の混迷が長期化した場合には「サプライチェーンへの影響を通じて、企業の生産活動に下押し圧力がかかるリスクもある」と指摘し、今後の金融政策については中東情勢が不透明なため、「経済・物価・金融情勢に及ぼす影響を注視する」と述べ、利上げに慎重姿勢を示しました。


 この講演後、市場の利上げ観測は後退し、円安となりました。

イラン情勢が今年半ばに収束に向かっても、中東からの原油輸入を90%以上頼る日本にとっては、原油が一段と下がり、かつサプライチェーンが回復していないと、日銀の慎重姿勢は続く可能性がありそうです。


 4月27~28日の日銀会合では据え置きとの見方が大勢ですが、据え置きとなった場合には、他国の中央銀行の利上げ姿勢も高まってきている中では、クロス円主導の円安が続く可能性も予想されます。ただ、足元の円安による物価への影響も判断材料になることも予想されることから、利上げの可能性も残っているため注意が必要です。


 このように相場も金融政策も、和平協議の成り行きを見極めるまでは本格的には動きづらい状況が続きそうです。そして和平協議合意が成立しても、原油が下がらないと他国の中銀の利上げ姿勢はくすぶり続ける可能性があります。


 2025年は他国が利下げ姿勢の中での日銀の利上げだったため、円高の反応も大きかったのですが、今年、特にイラン紛争以降は他国の利下げ姿勢は後退し、利上げ姿勢に転ずる可能性がある中での日銀の利上げになるため、円高効果は昨年より限定的になることが予想されます。


 一方、据え置き後の反応(円安)は昨年より大きくなる可能性があるかもしれないため、より注意が必要になってきそうです。


(ハッサク)

編集部おすすめ