4月11~12日、米国とイランが仲介国パキスタンの首都・イスラマバードで協議を行いました。イラン核開発やホルムズ海峡開放などの問題で折り合わず、合意には至りませんでした。
歴史的な米国・イラン「イスラマバード協議」も合意ならず
米国・イスラエルが2月28日にイランを攻撃し、イランも徹底抗戦する中でエスカレートしてきたイラン情勢。その後、戦争勃発から1カ月強が経過した4月7日(米東部時間)、パキスタンが仲介する形で、米イラン両国は2週間の一時停戦に合意しました。
合意から間もない4月11~12日未明、パキスタンの首都イスラマバードで、米国とイランによるハイレベル協議が開催されました。
米国からはヴァンス副大統領を筆頭に、ウィトコフ特使やトランプ大統領の娘婿・クシュナー氏らが、イランからは最高国家安全保障会議や国防評議会のトップ、イラン中央銀行総裁らが派遣されました。単なる実務者協議ではなく、国家最高指導者の意向を反映する形での、真剣勝負が繰り広げられたといえるでしょう。
パキスタンの仲介で間接的、直接的に約21時間の協議が行われましたが、会談以前に米国、イランそれぞれから停戦に向けて提示されていた条件の隔たりが大きいこともあり、両者は合意に至らず、結果、初日で協議は終了しました。
特に、イランの核問題、ウラン濃縮停止、および原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の開放問題などを巡る協議は平行線をたどった模様です。ヴァンス副大統領は協議後、「(イラン側と)中身のある協議を行ったが、悪い知らせは合意に至らなかったことだ。イランは長期にわたり核兵器を開発しないという決意を見せなかった」と経緯を説明しました。
自らの腹心を送り込んだイランとの歴史的会談が「失敗」に終わったことに対して、トランプ大統領は不満をあらわにし、米海軍がホルムズ海峡を即座に「逆封鎖」する意向を表明。
イラン側から譲歩を引き出すための駆け引き、威嚇としての意味合いもあると思われますが、イスラマバード協議で交渉団を率いたガリバフ国会議長は声明を出し「そのような脅しはイラン人には何の効果もない」「イランは脅しに屈したりしない」と反発しています。
私が本稿を執筆している4月15日午前は依然として米イランが合意した「2週間停戦」の期間中ではありますが、イラン情勢は一進一退の攻防という様相を見せているといえ、まったく予断を許さない状況が続くと思われます。
中国の外交的あっせん
さて、本稿ではここから、中国がそんなイラン情勢をどう見て、どう動こうとしているかを考えてみたいと思います。この問題を考える上で、中国共産党指導部が、イラン情勢を巡り、関連諸国とどのような話し合いをしてきているのか、言い換えれば、外交的あっせんを展開しようとしているのかを整理してみましょう。
米・イスラエルがイランに攻撃した2月28日~4月14日、習近平国家主席と外交を統括する王毅(ワン・イー)外相兼中央政治局委員(共産党トップ24)の動向を追跡することにします。
習近平国家主席 日時 相手 場所・形式 3月18日 トルクメニスタン・ベルディムハメドフ大統領 北京・対面 4月14日 アラブ首長国連邦(UAE)・ムハンマド大統領(アブダビ首長) 北京・対面 4月14日 スペイン・サンチェス首相 北京・対面 王毅外相 日時 相手 場所・形式 3月1日 ロシア・ラブロフ外相 電話 3月2日 オマーン・バドル外相 電話 3月2日 イラン・アラグチ外相 電話 3月2日 フランス・バロ外相 電話 3月3日 イスラエル・サール外相 電話 3月4日 サウジ・ファイサル外相 電話 3月4日 UAE・アブドラ外相兼副首相 電話 3月9日 クウェート・ジャッラーハ外相 電話 3月9日 バーレーン・ザイヤーニ外相 電話 3月11日 パキスタン・ダール外相兼副首相 電話 3月11日 カタール・ムハンマド首相兼外相 電話 3月12日 エジプト・アブデルアーティー外相 電話 3月12日 キューバ・ロドリゲス外相 電話 3月13日 オランダ・ベーレンドセン外相 電話 3月13日 アフガニスタン・ムッタキ外相 電話 3月15日 ベトナム・レー・ホアイ・チュン外相 北京・対面 3月18日 トルクメニスタン・メレドフ外相兼副首相 北京・対面 3月18日 UAE・ムバラク大統領中国担当特使 北京・対面 3月19日 英国・クーパー外相 電話 3月20日 フランス・ボンヌ大統領外交顧問 電話 3月23日 英国・パウエル国家安全保障担当首相補佐官 北京・対面 3月24日 イラン・アラグチ外相 電話 3月25日 エジプト・アブデルアーティー外相 電話 3月25日 トルコ・フィダン外相 電話 3月26日 インド・ラワット駐中国大使 北京・対面 3月26日 カナダ・アナンド外相 電話 3月27日 パキスタン・ダール外相兼副首相 電話 3月31日 パキスタン・ダール外相兼副首相 北京・対面 4月2日 サウジ・ファイサル外相 電話 4月2日 ドイツ・ヴァーデフール外相 電話 4月2日 EU・カッラス外交安全保障政策上級代表 電話 4月5日 ロシア・ラブロフ外相 電話 4月8日 タイ・シリントン王女 北京・対面 4月9日 北朝鮮・崔善姫外相 平壌・対面 4月10日 北朝鮮・金正恩委員長 平壌・対面 4月13日 UAE・ムバラク大統領中国担当特使 北京・対面 4月13日 パキスタン・ダール外相兼副首相 電話 4月14日 ロシア・ラブロフ外相 北京・対面
習近平国家主席の対外活動は限られているものの、2月28日~4月14日、王毅外相はかなり積極的に各国のカウンターパートと会談している経緯が見て取れます。
計38回の会談のうち、電話27回、対面11回、主にアラブ中東地域の外相と会談していますが、特筆されるのが、パキスタン・ダール外相兼副首相と4回(電話3回、対面1回)、ロシアのラブロフ外相と3回(電話2回、対面1回)行っている点です。
やはり、イラン情勢に向き合う上で、(1)ロシアとは戦略的に連携すべく、密に意思疎通を図る、(2)米・イランの仲介者であるパキスタンを背後で支える、という意図が働いているといえるでしょう。その他で言うと、UAE、サウジ、エジプト、そして当事者のイランというアラブ中東地域の外相とそれぞれ2回ずつ会談を行っています。
この期間における王毅外相の積極外交攻勢は、明らかに緊迫化するイラン情勢の影響を受けているという見方が可能かと思います。
中国はイラン戦争をどう見て、動こうとしているか
ここからは、上記で整理した積極外交攻勢を受けて、中国がイラン戦争をどう見て、動こうとしているのかについて、三つの視点から考察していきます。
一つ目は、中国として、緊迫化し、長期化するイラン情勢を注視し、可能な限りダメージをコントロールしたいと考えている点です。中国は近年、エネルギー安全保障の観点からも、原油の輸入先を多角化してきました。2025年時点で、中国はホルムズ海峡から輸入している割合は全輸入量の4割弱で、これは日本の9割強と比べても抑えられているといえます。
また、エネルギー源という観点からも、中国では近年電力化が進み、2025年における新エネルギー車(NEV)の販売割合は、新車販売全体の約5割に達しています。
ただ、これだけの備えをしてきているとしても、イラン戦争が長期化すれば、経済活動や国民生活への影響は予測不能となり、中東情勢全体がさらなる混乱に陥れば、制御不能になると懸念していると思われます。
二つ目に、中国として、泥沼化しつつあるイラン情勢には注視しつつも、「深入り」には慎重になろうとしている点です。トランプ大統領が宣伝したように、米軍がホルムズ海峡を封鎖すべく動き始めて以降、空母1隻と駆逐艦11隻を含む少なくとも15隻の艦艇が同海峡付近に配置されたとされます。
中国としてはそんな米軍やイランの反応を見つつ、自国のタンカーが同海峡を通過できるように各方面と交渉し、行動していくでしょう。
対面と電話のハイブリッドによる外交的あっせんを通じて、特に仲介国であるパキスタンを水面下で支援すべく動いていくでしょう。それでも、特に軍事的な行動には慎重に慎重を重ねるでしょう。深入りすることで、墓穴を掘るのを避けるためです。
三つ目に、イラン戦争を受けての米国の動きを密に注視しながら、「次の一手」を熟考しているという点です。「墓穴を掘る」という観点からすれば、中国は米国がそういう境地に陥ることを望んでいるでしょう。
米国が中東での戦争に明け暮れ、財政、軍事といったキャパシティー、および国内外での支持率や信用力を失うようになれば、中国として国際社会でより大きな影響力と発言権を持つことになると踏んでいるからです。
深入りせずとも、非軍事的手段としての外交的あっせんに尽力しているのはそのためです。
(加藤 嘉一)

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