確認可能な日本向け原油タンカー運航隻数は、5隻から21隻と過去1カ月で大きく増加し、国内需要の3分の1相当に達しました。米国などからの原油の調達増を維持できれば、国内備蓄在庫は来年の3月まで持つ計算です。

ただし、「他国との取り合いで量が確保できない」「現物価格が高騰する」といった懸念は尽きません。


日本向け原油タンカー運航隻数が大幅増、国内需要の3分の1相当...の画像はこちら >>

ペルシャ湾内で足止めされている日本向け原油タンカーの状況変わらず

 3月26日に日韓原油タンカー運航状況比較を行い、韓国は中東、米国以外にロシアなど他地域からも原油調達を進めていること、日本は米国含め中東以外の地域からの調達が進んでいないことなどをまとめました。


3月26日付: 日韓原油タンカー運航状況比較:ロシア積みタンカーが韓国へ航行中


 今回は日本向け原油タンカーの現在の状況について、約1カ月前と比較する形でまとめました。


 まずペルシャ湾内に足止めされていた原油タンカー8隻は、現在も変わらずペルシャ湾内で足止めされている状況です。


<ペルシャ湾内で足止めされている原油タンカー(変わらず8隻)>   船名 積み地 仕向け地 載貨重量
(千DWT) オーナー   日本向け           Mayasan サウジアラビア 苫小牧 312 商船三井   Towada サウジアラビア 四日市 306 日本郵船   Miracle Hope サウジアラビア 大分 319 CIDO   Shaden サウジアラビア 喜入 300 Bahri   Azumasan サウジアラビア 沖縄 302 商船三井   Tonegawa サウジアラビア 日本 313 川崎汽船   Daisen アラブ首長国連邦 日本 312 商船三井   Torm Evelyn バーレーン 千葉 75 Torm ※オーナーは実質オーナーを含む
出所:MarineTraffic、Oceanookなどより楽天証券経済研究所が可能な限り集計して作成(推定含む)

ペルシャ湾外積みは2隻から4隻に増加

 ペルシャ湾外ではヤンブー積みで日本に向かっているタンカーが2隻ある状況で、1カ月前と同水準です。他方、アラブ首長国連邦のフジャイラと、オマーンのミナ・アル・ファハルで原油を積んで日本に向かっているタンカーがそれぞれ1隻ずつ存在し、この部分は純増となっています。


 従って、1カ月前には2隻確認できたペルシャ湾外積み日本向けタンカーが、現在は4隻に増えた状態となっています。


<ペルシャ湾外積み原油タンカー(2隻から4隻に増加)> 船名 積み地 仕向け地 載貨重量
(千DWT) オーナー   日本向け           Alqadisia サウジアラビア
(ヤンブー) 四日市 116 Alqadisia   DHT Jaguar サウジアラビア
(ヤンブー) 四日市 300 DHT Jaguar   New Pearl アラブ首長国連邦
(フジャイラ) 名古屋 302 New Pearl   New Explorer オマーン
(ミナ・アル・ファハル) 名古屋 306 New Explorer ※オーナーは実質オーナーを含む
出所:MarineTraffic、Oceanookなどより楽天証券経済研究所が可能な限り集計して作成(推定含む)

米国からの原油タンカーは3隻から13隻に増加

 中東原油の調達が困難となる中、代替調達先の大本命である米国メキシコ湾岸からは、現在、日本に13隻の原油タンカーが航行中であることが確認できました。1カ月前の3隻から大幅増加となりました。


 特筆すべきは喜望峰経由(片道45日程度)ではなくパナマ運河経由(片道25日程度)で航行中のタンカーが複数存在している点で、より早い日本到着を企図したものと考えられます。


 ただし、パナマ運河を通れる船はVLCCよりもサイズが小さいこととパナマ運河の通航料支払いが必要となることから、積載している原油のバレル当たりの単価は上昇することになる点に留意が必要です。


<米国から航行中の原油タンカー(3隻から13隻に増加)> 船名 積み地 仕向け地 経由 載貨重量
(千DWT) オーナー   日本向け             Eco Oceano CA メキシコ湾岸 千葉 喜望峰 157 Lustre 3   Front Siena メキシコ湾岸 千葉 喜望峰 157 Sea 208   Otis メキシコ湾岸 千葉 パナマ運河 157 Root   Seaways Yosemite メキシコ湾岸 千葉 パナマ運河 113 Epsilon   Lawhah メキシコ湾岸 名古屋 喜望峰 299 -   New Prosperity メキシコ湾岸 名古屋 喜望峰 318 -   Princess Vanya メキシコ湾岸 四日市 喜望峰 319 Kronos   CE-Hamilton メキシコ湾岸 四日市 喜望峰 158 -   Tateshina メキシコ湾岸 菊間 喜望峰 312 日本郵船   Montestena メキシコ湾岸 菊間 喜望峰 159 Ibaizabai   Atrebates メキシコ湾岸 喜入 喜望峰 322 -   Caspar メキシコ湾岸 喜入 喜望峰 300 Hai Kuo   PVT Poseidon メキシコ湾岸 喜入 パナマ運河 115 - ※オーナーは実質オーナーを含む
出所:MarineTraffic、Oceanookなどより楽天証券経済研究所が可能な限り集計して作成(推定含む)

中東・米国以外からの原油タンカーが4隻に増加

 中東および米国以外の地域については、日本向けの存在は1カ月前には確認できませんでしたが、現在は4隻確認できる状態です。いずれもマレーシアの沖合で別のタンカーから積み替えた(STS:Ship-to-Ship転送)原油を搭載しているタンカーです。


 軽質原油主体の米国からの原油タンカー比率が高まる中、日本が必要とする中重質原油を少しでも多く確保するため、ホルムズ海峡を通過してきた他国のタンカー、もしくはペルシャ湾外で中東原油を積んだ他国のタンカーが積載する原油を受け取ったものと思われます。


<他地域から航行中の原油タンカー(0隻から4隻に増加)> 船名 積み地 仕向け地 載貨重量
(千DWT) オーナー   日本向け           Kisogawa マレーシアSTS 苫小牧 312 川崎汽船   Tedorigawa マレーシアSTS 川崎 312 川崎汽船   Setagawa マレーシアSTS 名古屋 300 出光タンカー   Leyte Spirit マレーシアSTS 菊間 110 Teekay ※オーナーは実質オーナーを含む
出所:MarineTraffic、Oceanookなどより楽天証券経済研究所が可能な限り集計して作成(推定含む)

現在の原油調達体制を前提とすると備蓄在庫は来年の3月くらいまでもつ計算

 今回確認できた、日本に向けて航行中の原油タンカーは合計21隻となり、約1カ月前の5隻から大幅に増加しました。21隻が積載している原油は合計約3,300万バレル(日本の消費量の11日分)に及びます。


 3,300万バレルの積み地内訳は、中東(ペルシャ湾外)が680万バレル、米国(喜望峰経由)が1,670万バレル、米国(パナマ運河経由)が260万バレル、マレーシアSTSが690万バレルとなっています。


 また、各積み地から日本までの航海日数はおおよそ、中東(ペルシャ湾外)が23日、米国(喜望峰経由)が45日、米国(パナマ運河経由)が25日、マレーシアSTSが10日です。


 各積み地からの航海日数を積載原油量の積み地の内訳で加重平均すると、約32日となります。日本の一日当たりの原油消費量を300万バレルとすると、32日分の原油消費量は9,600万バレルとなります。


 つまり、現時点の、米国を中心とした原油調達先構成比が継続すると仮定した場合、合計で9,600万バレルの原油を積載したタンカーが常に日本に向かって航海している状態になって初めて供給量が需要量と見合った形となり、日本国内の在庫が変動しない状態となります。


 実際は上記の通り9,600万バレルの約3分の1の3,300万バレルが日本に向かって航海中という状況であるため、残りの3分の2は国内の石油備蓄を取り崩すことによって補うほかありません。


 先月時点で254日と報じられていた石油備蓄が約1カ月たった現在220日程度になっているとすると、その220日分を、1日に3分の2日分ずつ取り崩していくことになりますので、330日、すなわち、来年の3月くらいまではもつ計算となります。


米国からの調達量維持・拡大、中重質原油不足など複数の懸念点が存在

 ただし、この1カ月で大幅に増えた米国からの原油は緊急対応によって獲得したもので長期契約に基づくものではない可能性が高く、来月になったら確保量が大きく減少する可能性もあります。その場合、来年の3月より早い段階で石油備蓄がなくなってしまうおそれがあります。


 また、日本のみならず各国が米国の原油を欲しがる中で、価格指標であるNYMEX WTIに上乗せされる現物プレミアムが大幅に上昇し、実際の買値がウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)を大きく上回るレベルとなっている可能性もあります。


 さらに、原油の絶対量が来年の3月くらいまで維持できたとしても、現在の原油輸入は軽質原油を中心とした構成となっていて軽油、重油が不足するバランスとなっているため、これらの石油製品の不足がもっと早い段階で生じる可能性があります。


 そのような事態が生じるのを防ぐため、中東以外からの中重質原油の調達、すなわちアンゴラのジラソル原油、カナダのオイルサンド、ロシアのウラル原油などの調達が検討されるべきと考えます。


(西 勇太郎)

編集部おすすめ