4月末の為替介入やイラン紛争が終結に向かう動きを見せたことにより、ドル円は円高に動いていましたが、イラン情勢は膠着状態。さらに高市首相が補正予算検討を表明したことよる財政悪化懸念がダメ押しとなり円安要因が強まりました。

ドル円が155円以下の円高は見えてくるのか、金利動向や6月の日米金融政策会合の動きに左右されそうです。


米中首脳会談後もイラン情勢膠着、日本の財政悪化懸念も加わり再...の画像はこちら >>

イラン紛争膠着、日本の財政悪化懸念で再び円安に

 ドル円は、再び160円に近づく動きをしています。


 ドル円は、4月末の160円台での為替介入によって155円台へと約5円の円高となりました。その後、ドルは反発し、158円が防衛ラインかもしれないとみられていましたが、あっさりと158円をブレイクし、159円台へと再び160円に近づく円安の動きとなっています。介入による円高を約3週間で8割戻した動きとなっています。その円安要因として、以下が考えられます。


  • イラン紛争が終結に向かう動きを見せましたが、条件が折り合わず膠着(こうちゃく)状態となり、紛争期待で低下した原油価格が再び上昇傾向にあり、円売り材料に。
  • 14~15日の米中首脳会談では、期待されていたイラン紛争が終結に向かうような動きは見られませんでした。そのため、紛争長期化・原油高長期化懸念が高まり、日本の金利が上昇し、今回の介入で防衛ラインとみられていた158円をブレイクし、円安が進行。
  • そして18日には、高市早苗首相が補正予算案の編成を検討すると表明したことから、日本の財政悪化に対する懸念が高まり、新発10年物国債利回りは1996年10月以来、約29年ぶりの2.80%に上昇し、ドル円は159円台の円安となりました。
  •  イラン情勢については、イランが核問題で米国に大幅に譲歩する姿勢を見せないことから、トランプ大統領は再攻撃を示唆していましたが、18日、自身のSNSで19日に予定していたイラン攻撃を延期すると表明しました。カタールやサウジアラビア、UAE首脳から米国と中東全ての国が「受け入れ可能な合意」が成立する可能性があり、攻撃見送りを要請されたと説明しています。


     延期は数日とのことですが、合意に至らなかった場合は、「直ちにイランへの全面的かつ大規模な攻撃に着手する」と米軍に指示したと伝わると、中東情勢の警戒感は再び高まっています。

    紛争終結に向けた動きが明確になって、原油が下がらない限り、この円安要因は続くことが予想されます。


    円安要因がさらに強まる中、155円以下の円高は見えてくるのか

     このようなイラン情勢の中での補正予算検討表明は、ダメ押し的に円安を後押しするタイミングでした。


     物価高対策を踏まえての補正予算検討が円安を招き、円安が物価高を招くというこの構図を、高市首相、あるいは高市政権は分かっていてやっているのであれば、そして円安は為替介入で止めればよいと考えているのであれば、いくら日米が連携していても介入効果はかなり減退することが予想されます。


     もう少し厳しく見れば、高市首相は円安容認と市場が捉えてしまうことも予想されます。


     円安の要因だった高市政権の積極財政による財政悪化懸念は、イラン紛争が始まったことによって後退し、中東情勢緊迫化による原油上昇が円安の主要な要因となり、原油上昇は円安に反応しやすくなっていました。ここに日本の財政悪化懸念要因が復活し、加わったことになったため円安要因が強まったことになります。


     ドル円は、しばらく155~160円のレンジ内で動意の乏しい動きが続くとみていましたが、ここへ来て円安要因が強まってきました。


     160円が近づくにつれて円安けん制が強まり、介入警戒感が高まることが予想されます。片山さつき財務相は、19日、パリで開かれたG7会議後の記者会見で「断固たる措置を取る時は取る」と発言しました。


     しかし、今回の介入後の動きで見られたように、原油高、金利上昇、高市政権の積極財政の環境下では、実弾が出ても円安への反発は速く、円安は一時的にしか抑えられていません。介入の原資も限られていることから、政府も介入のタイミングに慎重になってくることが予想されます。


     ただ、ベッセント米財務長官がG7期間中の植田和男総裁との会談の後、


    「過度な為替変動は望ましくない(excess volatility in foreign exchange rates is undesirable)」


    とSNSに投稿しており、為替市場も一時円高に動きました。

    日米が連携して円安をけん制していることを改めて市場に印象付けました。


     G7会議で議題にもなった世界的な金利上昇を警戒しているベッセント財務長官にとっても、日米が連携している姿勢を市場に見せることは非常に重要だと認識していることは市場に伝わりました。160円を超えてきた時に、再び米連邦準備制度理事会(FRB)のレートチェックのような動きの可能性があるかもしれません。そうなればけん制効果は高まることが予想されます。


     また、ベッセント財務長官は日本銀行の金融政策については、「植田総裁は日本の金融政策を適切に導くと確信している」と投稿し、このような表現で訪日時と同じように日銀に圧力をかけているようです。


     植田総裁は、G7後の片山財務相との共同記者会見で、「長期金利は速いスピードで上昇している」と長期金利上昇への警戒心を示し、「国債市場の動向は政府と連携して注視していく」との見解を示したことから、6月会合での利上げの可能性を示唆しているようです。


     市場では6月利上げはかなり織り込まれていることから、事前の円高効果は限定的かもしれませんが、実際に利上げが実施され、次回以降も利上げ継続の姿勢を示唆すれば、円高は持続するかもしれません。


     ドル円は155~160円のレンジ内でとどまるのか、158~163円のレンジに入ってくるのか注目されます。イラン紛争が終結しなければ、160円を超える可能性が高まります。その時に日米が連携して動くのかどうか注目です。


     イラン紛争が終結の方向で動き、原油が下がり、日銀から6月利上げへの発信が強まってくれば、ドル円は155~160円のレンジにとどまりそうです。155円以下の円高は、紛争終結後の原油、金利動向、6月の日米金融政策会合の動きに左右されそうです。


    (ハッサク)

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