エヌビディアの2027年1月期1Qは、85.2%増収、営業利益2.47倍。データセンター向けがハイパースケーラー向けだけでなく、新興クラウド、政府向け、企業向けも好調。

今後はAIエージェントの開発、運用コスト削減のために企業のAIインフラ自家保有が活発になり、AI半導体の企業向け市場が大きくなる可能性がある。目標株価290ドルを維持する。


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決算レポート:エヌビディア(業績好調。企業向けも拡大へ。目標株価290ドルを維持する)
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毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)


1.エヌビディアの2027年1月期1Qは、85.2%増収、営業利益2.47倍。

 エヌビディアの2027年1月期1Q(2026年2-4月期、以下今1Q)は、売上高816.15億ドル(前年比85.2%増)、営業利益535.36億ドル(同2.47倍)となりました。前年比、前四半期比とも大幅増収増益となりました。また、会社予想(レンジ平均値)の売上高780億ドル、営業利益507億ドルを上回りました。


 市場別売上高を見ると(今回から市場別売上高のセグメントが変更になりました)、データセンターの中のハイパースケール(大規模データセンター事業者。エヌビディアによると6社あり、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、オラクル他1社と思われる)向けは、前4Q338.14億ドル(前年比77.1%増)、今1Q378.69億ドル(同2.15倍)となりました。引き続き、ハイパースケール各社の生成AI向け大型設備投資の恩恵がありました。


 また、AIクラウド・インダストリアルズ・エンタープライズ(AI専用、GPU専用クラウド、産業向け、一般企業向け(コアウィーブのようなGPU専用クラウド、政府向け(ソブリンAI)はこの中に含まれる)は、前4Q285.00億ドル(同72.9%増)、今1Q373.77億ドル(同73.7%増)となりました。ハイパースケール以外のAI向けに特化したクラウドサービス会社や政府向け、企業向けが好調でした。この分野は、後述のようにトークンの計算処理費用を引き下げるために、オンプレミス(サーバー、ネットワーク機器、ソフトウェアなどのITインフラを自社内で保有し運用・管理すること)が重要な流れになりつつありますが、エヌビディアはすでにこの動きに備えている模様です。


 エッジコンピューティング(ゲーム用GPU、自動車向け、映像向け等)は、前4Q58.13億ドル(同55.0%増)、今1Q63.69億ドル(同28.7%増)となりました。メモリとシステム価格の上昇により消費者向け(主にパソコン用、ゲーム機用GPU)がやや減少したため、増収率が鈍化しました。またこの中に自動運転やロボットに使うフィジカルAI向けが含まれていますが、過去12か月で90億ドル以上の売上高になりました。


 今1Qの売上総利益率は74.9%となり、会社予想と同じでした。前4Q75.0%からほぼ横ばいでした。今の主力製品である「Blackwell」、今年後半に発売予定の次世代機「Rubin」ともに生産が難しいため、今の売上総利益率が上昇する期待は持てないと思われます。


 研究開発費は前4Q55.12億ドル(前年比48.4%増)から今1Q63.21億ドル(同58.5%増)に増加しました。研究開発費を含む販管費も同67.94億ドル(同44.9%増)から76.21億ドル(51.5%増)へ増加しましたが、会社予想の77億ドルを若干下回りました。そのため、今1Q営業利益率は65.6%となり、前4Q65.0%、今1Q会社予想65.0%を若干上回りました。


 また、投資先の未上場企業の評価益が計上されたため、営業外収支が163.67億ドルのプラスと大きくなりました(前1Qは2.72億ドル)。そのため、当期純利益の水準も高くなっています。


表1 エヌビディアの業績
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株価 215.33ドル(2026年5月22日)時価総額 5,229,504百万ドル(2026年5月22日)発行済株数 24,391百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数 24,286百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。注3:会社予想は予想レンジのレンジ平均値。

表2 エヌビディアの市場別売上高(四半期)
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単位:百万ドル、%出所:会社資料より楽天証券作成

表3 地域別売上高
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単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成。注:2026年1月期3Qより従来の仕向け先別売上高から本社所在地別売上高に変更された。

表4 エヌビディアの業績詳細(四半期)
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単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成。

2.今2Qも業績拡大が続こう。
企業のAIインフラ自家保有の動きに注目したい。

1)今期、来期と好業績が続こう。

 会社側の今2Q業績ガイダンスは、売上高910億ドル±2%、売上総利益率74.9%±0.5%、研究開発費を含む販管費約85億ドルとなります。また2027年1月期通期の税率は16.0~18.0%となります(いずれもGAAP(米国会計基準)ベース)。


 この会社側ガイダンスから計算すると、今2Q会社予想(レンジ平均値)は、売上高910億ドル(前年比94.7%増)、営業利益597億ドル(同2.10倍)となります。引き続き好業績が予想されます。


 また、会社側の業績ガイダンス、決算電話会議の内容と私の状況分析をもとに、エヌビディアの2027年1月期を売上高3,830億ドル(前年比77.4%増)、営業利益2,480億ドル(同90.2%増)、2028年1月期を売上高5,320億ドル(同38.9%増)、営業利益3,470億ドル(同39.9%増)と予想します。前回予想から上方修正します。


 次世代機「Rubin」は今3Qから出荷される予定です。


表5 2027年1月期2Q業績ガイダンス
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単位:億ドル、%注:表中の黒字は会社側ガイダンスの数字、それ以外は楽天証券計算。

表6 エヌビディアの市場別売上高(通期)
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単位:百万ドル、%出所:会社資料より楽天証券作成

表7 エヌビディアの業績詳細(通期)
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単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

2)AIエージェントブームの問題点と一般企業向けAI半導体の可能性

 会社側は、これまでの主力顧客であるハイパースケーラーとともにAIクラウド・インダストリアルズ・エンタープライズを重視しています。このカテゴリーで重要なのは、新興クラウドサービス会社やソブリンAIだけではなく、一般企業です。一般企業が生成AIを使ったAIエージェントに大きな関心を寄せており、実際に導入する企業も増えています。AIエージェントは情報システムを自動化し、システム構築費用を大幅に削減できるからです。


 ところが実際には、アンソロピックのクロードなどの生成AIを使ってシステム開発するときや、そのシステムを運用するときに、大量のトークン(生成AIに質問したり指示を与えた時に発生する少数の言葉の組み合わせ。このトークンをAI半導体で計算処理すると、目的の文章、プログラム、画像、映像などを生成することができる)が発生し、その計算費用(生成AI開発会社の月額定額料金やトークンベースの従量課金)が年間の情報システム予算に比べてかなり高額になるケースが出ています。


 この場合、オンプレミス(企業がAIインフラを自家保有すること)、即ち、生成AI開発会社に全てのトークンの計算処理料金を支払うのではなく、自社保有のAIインフラでトークンの計算処理を行うことが重要な選択肢の一つになってきました。アンソロピックなどの生成AI開発会社には最低限の費用を支払いますが、発生したトークンの大部分を自社で購入したAI半導体で計算処理するシステムを構築するのです。


 エヌビディア製AI半導体は高額ですが、高性能なのでトークンの計算処理を効率よくできます。また、自社所有なので減価償却でき、AI半導体が古くなったり余った場合は他社へのレンタルまたは売却が可能です。AIの企業利用が今後急速に進むであろうことを考えると、中古AI半導体のレンタル、売却は今後増える可能性があります。特定のハイパースケーラーのためのAI半導体である特注型AI半導体(ブロードコムなど)は、他社へのレンタル、売却は難しいと思われるため、エヌビディア、AMDの汎用AI半導体にはこの点で優位性があると思われます。


 このように考えると、企業向けはエヌビディアにとって大きな市場になると思われます。


3)製品体系は考え得る万全なものになっている。

 図1は、次世代機「Rubin」の上級機種「Vera Rubin」の内部構造を示したものです。「Vera Rubin」は、本体であるAI用GPU「Rubin」のほか、AI用CPU「Vera」など6つの半導体またはユニットから成り立っています。

特に「Vera」は重要で、推論が多くなるにつれて、推論関連の情報処理をAI半導体本体で行うよりもCPUで行うほうが効率が良いため、AIデータセンター専用のCPUとして開発されたものです。「Vera Rubin」として「Rubin」と接続して1つのパッケージに納められる場合もありますが、「Vera」単独で販売することもあります。会社側では今期の「Vera」単独の売上高は200億ドル近くになるとしています。


 これ以外にも、新登場の推論専用チップ「Groq3LPU」があります。従来からの各種スイッチ類(通信用半導体、ユニット)もグレードアップしています。エヌビディアの製品体系は、ハイパースケーラーから企業向けまで、今後起こり得る事態に備えた万全のものになっていると思われます。


図1 「Vera Rubin」の内部構造
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図1 「Vera Rubin」の内部構造

4)エヌビディアの新たなリスク要因

 一方で、エヌビディアにとって新しいリスクもあります。


 足元で起きている問題は、AIエージェントを組み込んだ情報システムを企業が構築するとき、運用するときにトークンが大量発生し、その計算コストが企業の情報システム予算に大きく食い込んでいる企業が出ているということです。トークンの計算コストを大幅に引き下げなければ、情報システムの構築費用が大きく減少しても、運用コストがそれ以上に増加してしまうため、AIエージェントによって情報システム費用が増えてしまうという本末転倒の事態になってしまいます。


 この状況が続けば、一般企業のAIエージェントブームが冷めてしまいかねません。この問題に対応するには、生成AI開発会社向けにAI半導体を貸し出しているハイパースケーラーは大型設備投資を続けてトークン当たりの計算コストを引き下げることであり、一般企業は低コストでトークンを計算処理できるAIインフラを自社で構築することです。この2つの動きは互いに競争することになります。


 この2つの動きが相まって、AIエージェントが低コストで構築、運用できるようになれば、AIエージェントブームは大きなものになると思われます。

AIエージェントは巨大企業から中小零細企業までの情報システムを自動化することができるからです。


 一方で、この動きがうまくいかない場合にはAIエージェントのブームがいったん冷めてしまうこともあるかもしれません。企業向けAI半導体市場は合算すると大きくなると思われますが、個々の企業の情報システム予算はハイパースケーラーの設備投資に比べるとはるかに小さいため、当面は企業のAIエージェントブームが続くのかどうか見極めたいと思います。


3.エヌビディア株への投資は中長期投資で、生成AI関連への分散投資も重要。

 グラフ1、2はエヌビディア株のチャートです(通常取引時間のチャートです)。5月20日(水)17時(米国東部標準時(夏時間))より決算電話会議が始まりましたが、その前に決算資料が開示されました。その時一瞬株価が上昇しましたが、すぐに下落が始まりました。その後は一時的な反発局面もありましたが、軟調な展開が続いています。一方で、決算内容はこれまで見てきたように良好です。


 私が考える株価が軟調な理由は以下の通りです。


  • 決算前に上場来高値を更新しており、株式市場はこの好業績をある程度予想していたと思われる。
  • 時価総額が5.2兆ドル(1ドル=159円換算で827兆円)と巨大なので、金融市場の影響、特に金利の影響を受けやすくなっている。
  • スペースX、オープンAI、アンソロピックと米国では大型上場が予定されており、この3社の上場に備えてエヌビディア株を売却する動きもあると思われる。
  • エヌビディアのリスクが、これまでの生成AI開発会社の資金調達問題から、一般企業のAIエージェントブームにおける情報システムコストの問題に移っていると思われる。
  •  一方で、足元のエヌビディアの業績は好調で、リスクを伴いながらも企業向けという新しい大きな市場が成長しつつあります。中長期では投資妙味があると思われます。


     また、エヌビディアは先端半導体市場と先端半導体技術の中核企業です。エヌビディアに注目する際には、図2のようにAIデータセンターの中で存在感が大きくなっているエヌビディア以外の生成AI関連企業、CPUではAMD、インテル、メモリではマイクロン・テクノロジー、キオクシアホールディングスなどに分散投資することも考えたいと思います。


    グラフ1 エヌビディアのチャート(15分足)
    決算レポート:エヌビディア(業績好調。企業向けも拡大へ。目標株価290ドルを維持する)
    出所:楽天証券ホームページ

    グラフ2 エヌビディアのチャート(日足)
    決算レポート:エヌビディア(業績好調。企業向けも拡大へ。目標株価290ドルを維持する)
    出所:楽天証券ホームページ

    図2 データセンター用半導体の階層構造
    決算レポート:エヌビディア(業績好調。企業向けも拡大へ。目標株価290ドルを維持する)
    出所:各種資料より楽天証券作成

    4.エヌビディアの目標株価は、前回の290ドルを維持する。

     エヌビディアの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の290ドルを維持します。


     予想株価収益率(PER)を見ると(表1)、2027年1月期、2028年1月期とも利益成長に対して割安になっていると思われます。また、800億ドルの自社株買いを発表しましたが、これも株価にはプラス材料と思われます。


     時価総額がすでに巨大であること、米国で予定される大型上場の影響、エヌビディアのリスクが生成AI開発会社の資金調達問題から一般企業の情報システム費用の問題になっていることを考えると、短期間での急速な株価上昇は期待しにくいと思われますが、引き続き中長期で投資妙味を感じます。


    本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)


    (今中 能夫)

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