自社株買いが、株価上昇に重要な役割を果たす時代となりました。米国の投資家は、配当よりも自社株買いを喜ぶ傾向があります。
今日のクイズ
クイズを二つ出します。
【第1問】
以下A社、B社、C社で、株主への利益還元比率が一番大きいのはどれでしょう? 3社とも財務優良、収益は安定的とします。
【第2問】
財務良好、収益力が安定しているK社は、2026年4月28日の取締役会で、以下の通り自社株買い(自己株式の取得)を決議したと発表しました。
予定通り上限の2,500万株を取得すると、K社の株価は理論上、何%上昇しますか? 以下から選んでください。
【1】0%
【2】約2.8%
【3】約5%
【参考】自社株買いは、株主への利益配分の手段の一つ
自社株買いとは、上場企業が、自社で発行している株を買い戻すことです。例えば、「NTTがNTTの株を買う」のが自社株買いです。「自社株買い」は、「配当金の支払い」とともに、株主への利益還元の手段です。米国のハイテク企業では、株主への利益配分は自社株買いのみ(配当無し)もあります。
ヒント:自社株買いのメリット、ケーキに例えると
自社株買いは、株主への利益配分方法の一つです。株主への利益配分で一番普通のやり方は配当金支払いですが、自社株買いもやり方が違うだけで株主への利益配分となります。
なぜ、自社株買いが利益配分になるのでしょうか?「自社株を買うんだから株価が上がるんでしょ」と、自社株買いのメリットを「買いが入る」という需給材料と考えている方もいます。
確かに「自社株買い」を発表した企業の株価が、短期的に大きく上がることもあります。自社株買いをネタに、短期筋が買い上がると、そうなります。
自社株買いの意味は、「買って株価を押し上げる」ことではありません。「1株当たりの利益を増やす」ことにあります。自社株を買うと、発行済み株式数が減ります。会社の利益総額が変わらなくても、1株当たり利益が増えます。1株当たりの利益が増えることを好感して株価水準が高くなることが期待されます。それが、自社株買いによる株主へのメリットです。
少し分かりにくかったかもしれないので、「例え話」で説明します。
40個のケーキ(企業の純利益)を株主10人で均等に分け合うことを考えてください。1人4個ずつもらえます。ここで、企業が自社株買いを実施し、株主2人の株を買い取ったとします。
正解
【第1問】C社
正解はC社です。
株主への利益配分方法として、配当金の支払いと自社株買いがあります。合わせてどれくらいの利益配分があったのか知るためには、下の表のとおり、配当利回りと自社株買い(発行済株式総数に対する比率)を足してください。その合計値が大きいほど、利益配分が大きいと考えてOKです。
発行済み株式総数の約10%の自社株買いを実施すると、株価は理論上、約11%上昇します。
配当金はもらった時点で、利益配分が確定します。ただし、自社株買いの方は、実施された時点で利益が確定するわけではありません。自社株買いについては、「一株当たり利益の増加に伴って株価が上昇する」ことによって、株主に利益がもたらされます。
利益配分の方法が異なるので、単純に足し算するのは、厳密に言うと問題があります。ただし、合わせてざっくりどれくらいの利益配分があったか知るためには、足し算することで把握できます。
【第2問】 【2】約2.8%
厳密な計算式は以下となります。
K社は、「発行済株式総数の2.8%に当たる2,500万株を上限として自社株買いを行う」と発表しました。この自社株買いが、株主にどのくらいのメリットを生むか、おおよその見当をつける方法を、お教えします。
発表された自社株買いが全て実行されると、発行済株式総数が2.8%減ります。すると企業の利益総額が変わらなくても、1株当たり利益が約2.8%(厳密にいうと2.88%)増えます。株価収益率(PER)での株価評価が変わらなければ株価は約2.8%上昇します。
簡単な例えで計算してみましょう。A社の利益総額を100億円、発行済み株式総数を1億株とします。すると、1株当たり利益は、100億円÷1億株=100円です。
ここで、A社が発行済み株式総数の2.8%(280万株)の自社株買いをしたとします。すると、発行済み株式総数は280万株減少して、9,720万株となります。1株当たり利益は、100億円÷9,720万株=約102.8円となります。
従って、1株当たり利益は、100円→102.8円と、約2.8%上昇します。
自社株買いのメリットの目安
自社株買いの発表があった時、株主へのメリットはどれくらいか、目安は以下の通りです。
自社株買いを上限まで実施するとしたら、発行済み株式総数の何%が減少するか、そのパーセンテージ分、株価が理論上上昇すると考えれば良いです。
例えば、上限、発行済み株式総数の約2%の自社株買いの発表があれば、株主へのメリットは、約2%と考えれば良いことになります。
ただし、注意事項があります。自社株買いは、必ずしも上限までやるとは限りません。過去いつも、自社株買いは上限までやってきた企業については、上限までやる可能性が高いとは言えます。
配当金と自社株買い、どっちが良い?
以下の【1】と【2】で、どちらのほうが株主にとってのメリットが大きいでしょうか?
【1】配当利回りで2%に相当する配当金を出す
【2】発行済み株式総数の2%に相当する自社株買いをやる
【1】と【2】で会社に必要な資金はほぼ同じです(自社株買いのマーケットインパクトをゼロと仮定した場合)。ところが、株主にとってのメリットは【2】自社株買いの方が大きいと言えます。
2%の配当金をもらうと、株主は配当金から源泉税などの税金を引かれます(NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などの非課税投資口座を使わない場合)。得られた配当金で投資を続ける場合は、改めて株を買い直す必要もあります。
一方、2%の自社株買いで理論通り2%株価が上昇する場合は、株主はすぐに税金を取られることはありません。売却して売却益を確定させない限り、税金はかかりません。いつ売却して税金を払うか、株主に選択権があります。再投資する手間もなく、そのまま複利で投資を続けられます。
従って、株主にとっては、税務メリットの観点から、一般的に自社株買いが選好される傾向があります。米国の投資家は、配当よりも自社株買いを喜ぶ傾向があります。そのため、米国の大手ハイテク企業では、株主への利益還元は自社株買いだけとし、配当金は無しにしているところも多数あります。
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