史上最大規模で上場したスペースXは、株価が乱高下しています。今後はナスダック100採用による買い需要がある一方、インサイダーのロックアップ解除に伴う売り圧力も警戒されます。
上場から1カ月、激しい値動きを見せるスペースXの株価
イーロン・マスク氏が率いるスペースX(SPCX)の株価が135ドルを下回った。同社は約1カ月前に米ナスダック市場へ上場し、資金調達額は約750億ドルと、史上最大規模の新規公開株(IPO)となった。さらに、通常の大型上場とは異なり、全体の30%を個人投資家向けに割り当てたことも大きな注目を集めた。
公開価格135ドルに対し、初値は150ドルと約11%上回った。初日の終値は160.95ドルとなり、時価総額は約2.1兆ドルに到達。米メタ・プラットフォームズ(META)などを上回り、米国市場で時価総額6位に浮上した。その後、6月16日には一時225ドル超まで上昇したものの、直近では冒頭の通り135ドルを割り込んでいる。上場から約1カ月が経過し、株価は大きく変動している。
スペースX(1時間足)
米上場企業の時価総額ランキング
スペースXとテスラ(TSLA)の最高経営責任者(CEO)を兼務するイーロン・マスク氏は、両社の統合を目指しているとされる。
6月11日付の日本経済新聞記事「マスク氏の『究極目標』はスペースX・テスラ統合 IPOテコにAIへ資金」は、マスク氏が両社を率いる利点として、これまで分散していた「マスク株式会社」ともいえる企業群の資金や技術を、今後の主戦場であるAI分野に集中できる点を挙げている。
一方で、相乗効果が生まれなければ、事業を多角化した複合企業として市場から価値を割り引かれる「コングロマリット・ディスカウント」に直面するリスクもあるという。
テスラ(日足)
ブームに乗らず収益性や需給動向を見極めるのがIPO投資の肝
今後、スペースX(SPCX)の株価に大きな影響を与えると考えられるのが需給動向だ。
上場初期の買い需要に対して、最大の売り圧力(需給悪化リスク)となるのが、内部関係者(インサイダー)の売却制限が解けるロックアップ解除である。今回のIPOでは段階的な解除スケジュールが組まれている。
※売却制限が解けるロックアップ解除の日程
8月11日:25%
8月21日:32%
9月10日:39%
9月25日:46%
10月10日:53%
10月25日:60%
11月9日:60%
12月9日:58~60%
一方、ナスダック100指数への早期採用が決まったことは、短期的には需給面の追い風となる。採用に伴い、推定300億~400億ドル規模の資金流入が見込まれている。組み入れ予定の7月下旬に向け、市場では先回りした買いが入りやすく、足元の株価を支える下値抵抗になるとみられる。
ナスダック100CFD(日足)
アーク・インベストメント・マネジメントを率いる著名投資家、キャシー・ウッド氏は、自社の主要上場投資信託(ETF)を通じてスペースX株の買い入れを本格化させている。ウッドは、スペースXがナスダック市場へ上場した直後から「破壊的イノベーション」の核心として、主要ETFを通じて連日のように大規模な買い付けを行っている。
とりわけ宇宙ビジネスを直接ターゲットとする「ARK宇宙探査&イノベーションETF(ARKX)」では、上場直後からスペースXが最大の組み入れ銘柄へと急浮上している。また、旗艦ファンドである「ARKイノベーションETF(ARKK)」は、テスラに並ぶ次世代の成長ドライバーとしてスペースXを大量に組み入れ、ポートフォリオの主軸に据えている。
足元で約50億ドルの純赤字を計上しているスペースXに対し、ウォール街の一部からは慎重論も出ているが、ウッド氏はスペースXを単なるロケット会社ではなく、地球規模の通信、計算インフラを提供する企業と定義している。
傘下のAI企業「xAI」との連携や、軌道上データセンター構想は、ARKが掲げる「人工知能(AI)」と「宇宙探査」の2大テーマが交差する完璧な実例であり、他社がまねできない独占的価値を生み出すと見ている。
2026年の大型IPO企業一覧
スペースXの上場が通過し、このあとアンソロピックといった大型の上場も控えている(オープンAIについては上場の延期が取りざたされている)が、IPO投資には注意が必要だ。
少し古い記事になるが、1月11日のブルームバーグの記事「AI巨大企業の上場は審判の時、ITバブル前夜と類似」は、「ヘクトコーン」と呼ばれる企業価値が1,000億ドルを超えるスタートアップ企業が2026年にIPOに踏み切る可能性があるが、歴史家に言わせると、その経緯はかつてのドットコム・バブル崩壊の前兆と重なると指摘している。
特に、収益性が明確でない成長期待型の企業の場合は、初値で評価されても公開後のパフォーマンスが芳しくないというケースが多々見られる。IPOの成功は市場のボラティリティや金利環境、マクロ経済情勢に左右されやすく、タイミングや需給環境も重要だ。
IPO後の株価パフォーマンスは銘柄により大きく差が出るため、ブームに乗らず個別に収益性や需給の動向を見極めることが必要になろう。
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(石原 順)

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