観光バスとは違う?「3列独立シート」が日本で普及した理由

 高速道路を走る夜行バスの中をのぞくと、普通のバスとは少し違う、不思議な光景が広がっています。

【さらに進化!】これが脚も伸ばせる上級シートです(写真で見る)

 一般的な観光バスや路線バスは、2人掛けの椅子が左右に並ぶ「4列シート」ですが、夜行バスには、座席が一つずつバラバラに置かれ、通路が2本ある「3列独立シート」というタイプがあります。

 海外の長距離バスでも3列シートを採用する車両は存在しますが、座席配列は国や地域、事業者によってバリエーションがあります。

 その中で、日本の夜行バスで見られる通路2本の「1-1-1」配列は、少なくとも国内では「独立3列シート」として、特にプライバシー性の高いタイプとして広く認知されています。

 この配列は、すべての乗客が隣の人をまたぐことなく通路に出られる実用性と、隣の客と肌が触れ合わないプライバシーを両立させているのが大きな特徴です。

 実は、この独自の進化の裏には、日本の法律による「2.5mの壁」が影響しているようです。日本では道路法(車両制限令)に基づき、道路を通行する車両の大きさの最高限度(一般的制限値)が定められており、幅は2.5mとされています。

 一方で、米国では連邦規則(23 CFR)により、ナショナルネットワーク(指定幹線道路網)を走行する車両について、幅の上限を102インチ(約2.59m)とする規定があります。

 このわずか10cm程度の幅の差が、2本の通路を確保しつつ、座席幅をミリ単位で設計しなければならない日本独自のレイアウトの進化に影響を与えたと考えられます。

 限られたスペースの中で「ひとりの空間」を最大化しようとする、日本ならではの工夫が詰まっているのです。

始まりは1980年代! もともとは鉄道に対抗するため

 なぜ、これほどまでに手間のかかる独立シートが定着したのでしょうか。その歴史は、今から40年ほど前の1980年代にさかのぼります。

夜行バスの「3列独立シート」は日本独自? 誕生の裏にあった“...の画像はこちら >>

ウィラーの3列独立シート(画像:ウィラー)

 日本で初めて1人掛けの3列独立シートを採用した路線は、1986年に大阪と福岡を結ぶ「ムーンライト号」とされ、その後の夜行高速バスにおける標準的なシート配置のモデルになったようです。

 当時は高速バスのネットワークが広がっていく時期で、新幹線や寝台特急といった鉄道に対抗する必要がありました。

 当時のバス事業者の戦略は、鉄道よりも安く、かつ移動中でも「ひとりの空間」を確保して、快適に眠れる環境を提供することでした。

 この「独立した空間で眠れる」という仕組みが、他者との接触を避け、プライバシーを重視したいという日本人の気質にマッチし、定着したと考えられています。

 現在では、さらに進化してカーテンで仕切られたり、壁で完全に囲われた個室のようなバスも登場しています。

 夜行バスの「3列独立シート」は、日本の道路事情と、プライバシーを大切にする文化が組み合わさって生まれた、日本では特徴的な「移動する個室」的な存在といえるかもしれません。

 次に夜行バスに乗る際は、その足元や通路に隠された、日本の設計者たちのこだわりをぜひ感じてみてください。

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