外はマイナス50度、エンジン内部は高温 空気が激変する仕掛け

 旅客機は通常、高度約1万mを飛行しています。この高度の外気では、気圧も酸素量も地上より薄くなります。

気温はなんとマイナス50度前後という過酷な世界です。

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 空気が必要な状態でも、そんな空気をそのまま機内に取り込むわけにはいきません。実は、機内で私たちが吸っている空気は、ジェットエンジンを経由して届けられているのです。

 JALによれば、多くの旅客機では、機外の空気をエンジンで圧縮し、機内へ送り込む仕組みになっているとのこと。旅客機に搭載されているジェットエンジンは、取り込んだ空気を強く圧縮して燃焼させる仕組みです。その圧縮機で圧縮されたあとの、燃焼する前の状態の空気の一部を分配し、送り込むのです。この空気は「ブリードエア(抽気)」と呼ばれます。

 圧縮を受けたブリードエアは、高温・高圧の空気になります。外気のマイナス50度近い空気が一気に加熱されるため、そのままでは機内に送ることはできません。

 そこでエアコン装置(エア・コンディショニング・システム)で適温まで一気に冷やし、23~25度程度に整えてから天井の吹き出し口に送ります。外の極寒の空気は、ものの数秒で“快適な室温”に生まれ変わっているのです。

 では、客室に入った空気は、そのあとどこへ行くのでしょうか。

2~3分で入れ替わる"病院レベル"の空気 787は仕組みも違う

 JALの公開資料によれば、天井から出た空気は客室内を上から下へ流れ、さらに床下へと移動します。そこで吸気された空気の一部は機外へ排出され、残りはHEPA(ヘパ)フィルターという高性能フィルターを通ってから再び天井へ送られます。

機内の空気「エンジン」由来って!? わずか3分で空気が入れ替...の画像はこちら >>

キャビンの空気はエンジンから(画像:写真AC)

 ANAグループなどによれば、HEPAフィルターは0.3マイクロメートル以上の粒子を99.97%以上捕集する性能を持ち、病院の手術室に用いられるフィルターと同等水準とされています。微小な粒子を効率よく捕集することで、ウイルスやバクテリアを含む粒子も除去できる仕組みです。

 さらに、機内の空気はわずか2~3分ですべて入れ替わるとされています。一般的なオフィスビルでは、換気は1時間に数回程度。それと比べると、飛行機の客室は、想像以上に“きれいな空気”が流れ続けている空間だといえるでしょう。

 ここでもうひとつ、飛行中の機内の気圧についても触れておきましょう。

 外の気圧のままでは酸素不足になってしまうため、旅客機は客室を加圧しています。多くの機種で、客室の気圧は地上の約8000フィート(約2400m)相当、富士山の登山口である五合目付近の高さと同程度に保たれます。

 ボーイング787は、機体にカーボン素材を多用することで、より大きな気圧差に耐えられるようになりました。JALの説明では、787の客室の気圧は高度約6000フィート(約1800m)相当まで下げられています。

従来機よりも地上に近い場所と同じ気圧にすることで、耳がツーンとする不快感が減った、という乗客の声もある模様です。

 さらにボーイング787には、空気の取り入れ方にも画期的な装備が付いています。ANAグループの公式サイトによれば、飛行中の与圧について、従来のようにエンジンから空気を抜き取っていないとのことです。

 ではどのように機体を与圧しているのかというと、胴体下部から取り込んだ外気を専用モーターで駆動するキャビン・エア・コンプレッサーで圧縮し、空調に使っているのです。装備を新しく用意したことで、よりエンジンへの負荷が減り、燃費向上や機体の軽量化、信頼性を向上するといういろいろな効果が出ているとのことです。

 何気なく吸っている機内の空気。そこにはマイナス50度の外気をたどり、エンジンの高温を経由して、病院レベルのフィルターまでくぐってきた“長い旅路”があるのです。

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