法令改正により、排気量125ccまでのATバイクに乗れる「AT小型限定普通二輪免許」の取得要件が緩和されました。メーカーも125ccバイク「原付二種」のラインアップに注力していますが、限定免許の内容も含め、どのような点にメリットがあるのでしょうか。

週末2日間で取得可能に 台数は微増傾向

 2018年7月に道路交通法施行規則の一部が改正され、排気量125ccまでのATバイクに乗れる「AT小型限定普通二輪免許」の取得要件が緩和されました。

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ヤマハ「トリシティ125」。同社独自の前2輪構造「LMW(リーニング・マルチ・ホイール)」製品の第一弾として登場した(画像:ヤマハ)。

 排気量125cc以下のバイクは一般的に「原付二種」と呼ばれ、地の色がピンクの原付ナンバープレートが交付される車両です。バイクのラインアップとしては50ccの「原付一種」よりひとまわり大きい小型スクーターなどが多いですが、原付一種のように30km/hの速度制限や、二段階右折といった規制もありません。ただし高速道路は走行不可です。

 法令改正前、普通免許保有者などがAT小型限定普通二輪免許を取得する際には、教習終了に最短でも3日を要しましたが、改正後は1日あたりの技能教習時間が引き上げられ、最短2日間で取得することが可能に。週末の2日間で免許をとれることから、ヤマハの担当者も「お客様が免許を取得しやすくなり、選択の幅が広がります」と期待を寄せます。

 近年はバイクメーカーも125ccに新型を多数投入しています。たとえばヤマハでは、2013年に2機種しかなかったのが、2014年に投入した前2輪の3輪スクーター「トリシティ125」をはじめ、現在は5機種に増加。バイク全体の売上台数が減少するなかでも、「台数の規模を維持しており、微増傾向にあることから注力しています」と話します。

 とはいえ、小型限定普通二輪免許は、その名の通りの限定免許で、125ccまでのバイクしか乗ることができません。

普通二輪免許(いわゆる「中免」)であれば400ccまで乗ることが可能ですが、費用などはどれくらい違うのでしょうか。

都市部ならではの乗りもの?

 東京都葛飾区の平和橋自動車教習所によると、すでに普通免許を取得している場合、AT小型限定普通二輪免許の教習料金は約11万5000円であるのに対し、AT普通二輪免許は約13万5000円。期間は教習所の予約状況にもよるので一概には言えませんが、技能時限数を比べた場合は前者が9時限、後者が13時限です。値段的にもそれほど差がないこともあり、以前は「小型限定を取るくらいならば普通二輪を取ってしまえ」という人も多かったといいます。

 ところが近年、平和橋自動車教習所ではAT、MT(教習料金およそ12万3000円)ともに小型限定を取る人が増えているといいます。2010年代前半のガソリン価格高騰期を境に、ひとつにはクルマ通勤から乗り換える目的で取得する人が増えたとのこと。

普通二輪免許であればバイク選びの幅も広がりますが、「これしか乗らないから」という人も少なくないそうです。

 原付二種は高速道路を走ることができないなど、普通二輪とは異なる制約もあります。しかしながら「原付」であること故のメリットも。平和橋自動車教習所は、「原付一種と同じ扱いで、マンションの駐輪場に停められるからという理由で教習を受けられる人もいます。原付よりひと回り大きいくらいのサイズという安心感もあるでしょう」と話していました。

免許取得しやすくなった125cc「原付二種」 バイク各社も注力、そのメリットとは

ホンダ「スーパーカブ110」。
ギアはマニュアルだが、クラッチがないのでAT限定普通二輪免許で乗れる(画像:ホンダ)。

 実際、警察庁の免許統計によると、2017年の小型限定普通二輪免許の取得者は大阪、神奈川、東京など大都市を抱える地域がほとんど。なおかつ、その多くがAT限定を選んでいるところをみると、都市部におけるスクーターの需要が高いことが伺えます。ちなみに、ヤマハの125ccバイクのラインアップも、すべてスクーターです。

道交法では「原付」扱いじゃない!

 二輪車の業界団体である日本二輪車普及安全協会(東京都豊島区)によると、「原付二種はコスト負担が少ないうえ燃費もよく、渋滞の負担もクルマより軽減されるなど、都市部における『コミューター』としての役割が広がっています」と話します。免許取得の要件緩和を国に働き掛けてきた日本自動車工業会も、「125ccクラスは、アジアにおいては庶民の生活モビリティとして最もスタンダードなもの」とし、都市部における移動手段としての原付二種の有用性を訴えてきました。

 しかし、自宅マンションの駐輪場はいざ知らず、自治体が運営する駐輪場などでは、「原付一種は置けるが、二種は置けない」というところもあるようです。

「原付一種はあくまでも『自転車』という扱いなのですが、二種は法令区分のスキマに位置する微妙な部分があります。道路運送車両法では125ccまでのバイクは『原付二種』に区分されるものの、道路交通法では『原付』は50ccまでで、それ以上は普通二輪として扱われるのです。この道路交通法の区分に基づき、条例で駐輪場での取り扱いを原付一種までとしている自治体があります」(日本二輪車普及安全協会)

 原付二種を停めるのはあくまでバイク用の「駐車場」としているところでは、「(原付一種と)そんな違いがあるとは認識していなかった」と、戸惑う利用者もいるそうです。しかしながら、街の駐輪場では、自転車置き場は満車で、原付置き場は空いているという状況も生じているとのこと。そのような駐輪場に原付二種も置けるよう、日本二輪車普及安全協会が働きかけ、それを受けて条例を改正する自治体も増えているそうです。

免許取得しやすくなった125cc「原付二種」 バイク各社も注力、そのメリットとは

スズキ「アドレス125」。税込22万1400円と、125ccスクーターとしては最も低価格なモデルのひとつ(画像:スズキ)。

 日本二輪車普及安全協会によると、「ひと昔前は原付二種のラインアップも多くはなかったので、自治体も、自転車とともに一種を置けるようにさえしておけばよい、という考えのところが多かったのです」とのこと。いまでは二種に乗る人も増え、少しずつ利用しやすくなってきていると話します。