第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の1次ラウンド初戦(中国戦)まで、強化試合も残すところ大阪での2試合(3月5、6日)だけとなった。これまで宮崎でのソフトバンク戦、名古屋での中日戦の計4試合を戦った日本代表だが、まだメジャーリーガーは参戦していなかったとはいえ、不安を残した。
名古屋からチームに合流した大谷翔平(写真左)とラーズ・ヌートバー
【鈴木誠也の辞退で打順は?】
まず、日本打線の中軸として期待されていた鈴木誠也が左脇腹を痛め辞退。それに伴い追加招集されたのは、右の長距離砲タイプではなく、ユーティリティープレーヤーの牧原大成だった。
合宿から好調を続ける近藤健介をスタメンで起用し、逃げ切りたい展開になった時に牧原を投入する。新たな攻撃型タイプを入れて布陣が大きく変わるよりも、宮崎合宿で築いたチーム構成を優先したほうがいいと判断もあったのだろう。
栗山英樹監督も牧原の追加招集について、「いちばん勝ちやすい形に」との表現で、守備に重きをおいた補強だったことを明かした。
これにより、外野のスタメンは吉田正尚、近藤健介、ラーズ・ヌートバーの3人が濃厚となった。鈴木が守る予定だったライトのポジションには、ヌートバー、もしくは近藤が入ることになりそうだ。
ただ打線に関しては、鈴木が抜けたことで変更を余儀なくされそうだ。外野の3人はすべて左打ちで、打線の中軸を担うであろう大谷翔平、村上宗隆も左。バランスを考えると、右打者の起用法がカギを握る。
では、どんな打線を組めばいいのか。
現状を鑑みて、これは予想ではなくあくまで一例を挙げるとすると、こんな打線も考えられる。
1 吉田正尚(レフト)
2 牧秀悟(セカンド)
3 大谷翔平(DH)
4 村上宗隆(サード)
5 山川穂高(ファースト)
6 ヌートバー(ライト)
7 近藤健介(センター)
8 甲斐拓也(キャッチャー)
9 源田壮亮(ショート)
吉田を上位で起用する案は以前から候補として挙がっていたが、鈴木の外れた打線にインパクトを与えるとしたら、吉田の1番は適任ではないだろうか。
5番については、4日の中日戦で本塁打を放った岡本和真が好調を続けるなら、山川と入れ替えてもいい。
現状、近藤の状態のよさ、出塁率の高さを考えると、上位で起用したいところだが、左打者が3人以上並ぶのを避けるためには、どうしても下位に置かざるを得ない。ただ考え方によっては、下位でチャンスをつくり上位で還すという形ができる。そうすることで打線に切れ目がなくなり、ビッグイニングのチャンスも広がる。
鈴木が抜けたことで長打力は落ちるだろうが、そもそも国際大会は容易に得点できないという前提で臨むべきである。
もちろん、大谷を筆頭とするメジャー組が加われば、これまでの打線の印象が変わり、雰囲気そのものも違ってくるだろうが、一発に頼らずどこまで得点力を上げることができるのか。打線に関しては、そこが大きなカギを握るだろう。
【使える投手の判別】
一方の投手陣だが、今大会の参加国のなかでも充実度はトップクラスだ。なかでも首脳陣がこだわったのが"三振"だ。
ダルビッシュ、大谷はもちろん、山本由伸、佐々木朗希らの先発陣、栗林良吏、湯浅京己、大勢らのリリーフ陣の多くはフォークの使い手だ。
とくに1次ラウンド、準々決勝はホームランが出やすいと言われている東京ドームでの試合となり、タイミングは外しても、うまく拾われて一発というケースもある。そのリスクを少しでも避けようとする意図が透けて見える。
そしてWBCと言えば、毎回問題になるのが使用球だ。
いずれにしても、短期決戦で重要なことは選手の見極めである。とくに投手の好不調はチームの勝敗につながる。WBC球に対応できていないのであれば、起用を見送るべきだし、不安のある状態でマウンドに上げることは避けたい。
そんななか、日本の投手陣に貢献しているものがある。それがロジンだ。これまでWBCは米国製のロジンに限られていたが、今回初めて日本製の使用が認められた。これは日本の投手陣に好評で、使い慣れたロジンが強い味方になってくれるはずだ。
残された時間はあとわずか。メジャー組も加わり、ようやく日本代表の全貌が明らかになる。長打不足、得点力不足を露呈したこれまでの印象を一掃できるのか。最後の強化試合で"日本の戦う形"を見出したい。