横浜高校野球部の長浜グラウンドのベンチには、いくつものメッセージが書かれたホワイトボードが立てかけられている。

 たとえば、打撃については「豪打一新」、投手陣には「緩急自在」、捕手陣には「大胆不敵」、守りについては「守備職人」、走塁について「疾風迅雷」といった具合に、それぞれのポジション、役割ごとに力強い言葉が書かれている。

これらは村田浩明監督と選手たちが、それぞれの想いを込めて書いたものだ。

【高校野球】「自分たちは強いと思っていません」 選抜王者・横...の画像はこちら >>

【公式戦連勝記録は27でストップ】

 昨秋の県大会、関東大会、神宮大会、そして今年春の選抜甲子園で怒涛の強さを見せた横浜だったが、今春の県大会は制したものの、関東大会では準決勝で専大松戸(千葉)に敗れ、昨秋から続いていた公式戦連勝記録も27でストップした。

 連勝が途切れたからといって、甲子園出場、そして春夏連覇の夢が消えたわけではない。村田監督は連勝記録が止まったことについて、こう語る。

「連勝中に試合ができたことは、チームにとって大きな財産になりました。多くの反省材料を得られましたし、自分にとっても、生徒たちにとってもよかったと思っています。私たちは『決勝まで一戦必勝』という目標を立てていますし、目指すのは連勝記録ではなく、甲子園です。仕上がりはまだまだですが、もっとチーム力を高めていけるはず。正直、私は自分たちが強いとは思っていません」

 選抜以降、疲労からかケガ人が続出した。主将の阿部葉太(3年)をはじめ、為永晧(3年)、奥村頼人(3年)、奥村凌(3年)、池田聖摩(2年)ら、主力選手が相次いで離脱。県外の強豪校と練習試合を重ねても、チームの仕上がりは今ひとつだった。

 村田監督は夏の大会に向けて、次のように語る。

「毎年のことですが、夏の暑さはとにかく厳しい。

どのチームも継投がカギになるでしょう。投手は(エースの)奥村(頼人)だけではありません。キーマンはたくさんいます。山脇悠陽、片山大輔(ともに3年)、織田翔希、前田一葵(ともに2年)。

 さらに、野手からマウンドに上がれる池田聖摩、小野舜友(ともに2年)、山本正太郎(3年)もいます。また、将来を嘱望される1年生左腕の小林鉄三郎、ショートの田島陽翔も軽快な守備を見せてくれていますし、今後が楽しみです」

【ケガで離脱の主力が続々復帰】

 ケガをしていた主力たちが復帰した6月末、横浜栄との練習試合では、プロ注目の本多凌から阿部が打った瞬間それとわかる強烈な本塁打をライトに放った。

 その翌日には強打の浦和学院と対戦し、織田が8回2/3を投げて1失点、12奪三振の快投を披露。夏に向けて大きく期待が膨らんだ。しかし、織田がマウンド降りたあと、後続が打ち込まれ大量失点。3点あったリードを守れず、4対7で逆転負けを喫した。それでも選抜優勝の立役者となった投打の中心選手が戻り、準備は万端。

 村田監督は言う。

「一昨年、昨年と2年続けて(神奈川大会)決勝で負けたからといって、『借りを返す』という気持ちはまったくありません。とにかく目指すのは甲子園。そのために、まずは神奈川の舞台でしっかり結果を出さなければなりません。神奈川を勝ち抜くために、何をすべきかを追求したいと思います。

 これまでなら絶対的エースが何イニングもひとりで投げて、疲れても投げ続けるのが当たり前でした。しかし、今はそのやり方では投手が壊れています。だからこそ、カウントの途中でもスパッと交代する。一人ひとり球質もスピードも違うので、使い方次第です。"全員野球"を掲げている我々の野球は、このやり方がピッタリだと思っています。うちにはそういう選手がたくさんいるので、頑張ってほしいですね」

 松坂大輔(元西武ほか)らを擁して春夏連覇を達成した1998年以来の快挙に注目が集まるが、その前に全国屈指の激戦区・神奈川を勝ち抜かなければならない。はたしてこの夏、横浜はどんなドラマを見せてくれるのだろうか。

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