【大谷翔平】ドジャース打撃コーチが語る「2ストライク後のアプ...の画像はこちら >>

後編:大谷翔平「二刀流」復活と「一番打者」としての変化

8月27日(日本時間28日)のシンシナティ・レッズ戦で749日ぶりの勝利投手となり、「二刀流」復活への大きな一歩を踏み出したロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平だが、ここ数カ月、「一番打者」としてのアプローチへの変化も垣間見える。

前編〉〉〉749日ぶりの勝利投手の意味と「一番打者」としての役割

【大事なのは"やりすぎないこと"】

 現在の大谷翔平は打撃面のアジャストを実行している。ドジャースのアーロン・ベイツ打撃コーチに「監督は"翔平は打撃コーチとともにメカニカルな部分で調整をしている"と話していました。

実際、このところボール球を追いかけることが減り、2ストライク時のアプローチも変わっているように見えます。そのとおりですか」と質問すると、こう答えた。

「間違いなくそうですね。2ストライクになると、彼はスイングを短く(コンパクトに)していますし、考え方(マインドセット)も変えています。大きなスイングで長打を狙うというよりも、ラインドライブを打ち返す意識に切り替えているのです。スイングの形も少し変えていて、バットの軌道があまりフラットになりすぎないように、少しアップライト(立ち気味)にしています。そうすることで、より確実にバレルでボールをとらえられるようになっています」

 アップライトにするというのは、バットを横に払うような"寝かせたスイング"ではなく、ほんの少し角度をつけて縦ぎみに振るということだ。そうすることで、ボールに対してバットの芯を正確にぶつけやすくなり、ライナーや強い打球が生まれやすくなる。

 それでも「長打力が損なわれることはない」とベイツコーチは強調する。

「翔平はものすごいパワーを持っています。だから無理に力を入れて大きなスイングをしなくても、ラインドライブを打てばそのままホームランになる力がある。だからこそ大事なのは"やりすぎないこと"。

つまり自分の範囲に収めて、自分の打撃を保つことなんです」

【7・8月にロバーツ監督が不満を示した内容とは?】

 実はドジャースは7月、8月と打線のつながりを欠いていた。7月は10勝14敗と負け越し、8月も勝ったり負けたりを繰り返す不安定な戦いぶり。今季最も弱いチームとされるコロラド・ロッキーズとの4連戦(8月18~21日)ですら2勝2敗に終わった。そして続く22日からの宿敵サンディエゴ・パドレス戦でも苦戦。第1戦はダルビッシュ有に6回を1安打1失点に封じられ、第2戦も左腕ネスター・コルテスにわずか1安打無得点と完敗した。

 試合後、ロバーツ監督は不満を隠さなかった。

「この時期になると、スイングのメカニクスどうこうではなく、どうやってチームの勝利に貢献できるかが重要なんです。打線をつなげるために、ボールをよく見て、粘ってファウルでつなぎ、食い下がる。そういう"次のレベルの取り組み"が必要なんです」

 実際、この2試合の打線には工夫が欠けていた。コルテスはシーズン序盤に肘を故障し、復帰してまだ4試合目という状況で球威も落ちていた。そのため積極的にストライクゾーンを攻めず、右打者中心のドジャース打線には外角へのカッターとチェンジアップを配球。数少ない左打者には逆方向へスイーパーを投げ分けた。

「外角ばかり攻められて、打てる球をまったくもらえなかった」と試合後に語ったのは捕手のウィル・スミス。

全体的に、打者はみなスイングが大きくなっていた。

 試合後、「ネスターが外角中心に攻めているなら、逆らわずに反対方向へ打てばよかったのでは?」と記者から質問を受けると、ロバーツ監督はうなずいた。

「そのとおりです。昨日のパドレス戦ではマニー(・マチャド)が得点圏でスイングを小さくして中前打を放ちました。今日のラモン・ロレアノも、プルヒッターでありながら逆方向へ打って2点を挙げた。打線をつなぐには、そうした工夫が必要なんです。相手はみんないい投手なんですから、大振りばかりではダメ。短く持って対応しなければいけない。残念ながら、それを全員で徹底できていなかった」

【確立しつつある一番打者としての"大谷流"】

 もっとも、この試合で問題に気づいたのは監督だけではなかった。チームリーダーのミゲル・ロハスは「今日のスイングの多くは出塁を意識したものではなかった。カウント序盤から長打を狙いすぎていた。それを(コルテスに)突かれた」と反省し、試合後には選手同士でアプローチについて話し合ったという。

 ロバーツ監督も「投手のゲームプランに対抗するには、打線も意図をもって対抗しなければならない。スイングを短くしなければならない場面もあるし、それはできるはず。実際にやっている選手もいる。ただしチーム全体としては徹底できていない」と語った。その一方で、この日のクラブハウスには前向きな兆しがあったと感じたという。

「選手たちは試合後に正しいことを言っていた。我々は"自分たちらしさ"を取り戻し、泥臭く戦い、得点をもぎ取る方法を探す。その意欲は必ず形になると信じています」

 言葉どおり、チームは8月24日から4連勝を飾り、4試合で26得点と打線が復調した。大谷もその4試合で16打数3安打、3四球、1本塁打、3得点と、確実にチームに貢献している。

 シーズン全体を通して見ても、一番打者大谷のアプローチは進化している。初球を振る確率は2024年の39.6%から32.5%へと下がり、ボールをよく見るようになった。ボール球に手を出す割合も26.6%から25.6%に改善。

昨年はシーズン途中から一番打者に回ったが、今年はここまで121試合で一番、10試合で二番と、リードオフマンの役割が板についてきた。大谷は常にチームを第一に考え、自らのプレースタイルを順応させる。今後も首脳陣の意図に応じ、ボール球を追いかける傾向がさらに減り、2ストライク時のアプローチもより洗練されていくのだろう。

 ベイツ打撃コーチもこう語る。

「翔平は本当に几帳面で、自分の打撃を熟知しています。ですから新しいことを一から教える必要はありません。ときどき『2ストライクではこの投手はこう攻めてくるから、こういう意識でラインドライブを狙ってみてはどうか』とリマインドする程度で十分なんです。それはフレディ(・フリーマン)やムーキー(・ベッツ)も同じ。どんな打者でも、小さなことを思い出させる必要がある。翔平も例外ではありません。大げさなプレゼンのような指導ではなく、ほんの小さな助言で、彼自身が修正し、アジャストできるんです」

 勝負の9月、そして10月、一番打者・大谷翔平はさらに進化を遂げていく。

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