「メダルにあと一歩及ばず」などではない。「立つべき表彰台を逃してしまった」が、一番ふさわしいだろう。
タイで行なわれた女子バレーボール世界選手権で世界を魅了した日本は、2000年(東京大会での銅メダル)以来となるメダルを獲得するにふさわしいチームだった。いかにも日本のバレーボールらしい卓越したテクニック、長くラリーをつなぐ力、驚異的なディフェンス......。そこにエースの石川真佑とオポジットの和田由紀子の才能と、さらにはトルコ人監督フェルハト・アクバシュの闘志が加わった、すばらしいチームだった。
にもかかわらず、メダルに届かなかったのはなぜか?
私にはそのひとつの原因が、勝敗を左右するような決定的瞬間におけるマネジメント不足にあるのではないかと感じられた。ここで異なる戦術的な判断をしていたら、もっとチームを助けることができたはず――そんなシーンがいくつか見られた。決勝ラウンドまでの道のりは決して楽ではなかったが、物理的な条件が日本を助けていた。4強のなかで日本は唯一、移動を強いられずに、グループリーグから決勝までバンコクで戦うことができた。
日本はグループリーグで前回王者セルビアを下し、首位通過を果たした。しかし、ウクライナには2セットを先取されるという危うい場面も見られた。決勝トーナメントではまず順調にタイをセットカウント3-0で退けたが、準々決勝以降はまるでマラソンのような持久戦が続いた。オランダに3-2で勝ったあと、準決勝でトルコに1-3、3位決定戦はブラジルに2-3で敗れた。
準決勝以降で浮き彫りになったのは、日本が相手に比べてどうしてもパワーと高さで劣ることだ。
準決勝では、アタッカーの起用があまりうまくなかったと感じた。石川と和田を継続的に起用することで試合に乗ることはできたが、もうひとりの主力・佐藤淑乃に対してはそうではなかった。そのため彼女は終盤で存在感を失ってしまい、最も重要な時間帯にフェードアウトしてしまった感じがした。
【スパイクに重量感が増した石川】
3位決定戦では、0-2と追い込まれたところで、アクバシュ監督が試合を立て直すために動いた。セッター関菜々巳に代えて中川つかさを投入。するとチームはリズムを取り戻し、タイブレークに持ち込んだ。しかしその場面で、日本はさらなる手を打つ必要があったのではないかと思う。
ブラジルは日本の動きに冷静に対応し、的確な戦術を実行した。新たに入った中川は、技術的には高いが、身長は159センチと低いため、ブロックは弱い。
おそらくおそらくここが、金メダルを手にしたイタリアとの違いだ。23年ぶりに頂点に立ったイタリアにとって、フリオ・ベラスコ監督は「付加価値」そのものだった。パオラ・エゴヌ、ミリアム・シッラ、アレッシア・オッロ、サラ・ファール、モニカ・デ・ジェンナーロら、選手の力に加え、監督の難局を打開する柔軟さと決断力が、イタリアに勝利をもたらした。
それが最も顕著だったシーンが、決勝トルコ戦でのタイブレーク。8-7となった時点でオッロとエゴヌを下げ、エカテリーナ・アントロポワとカルロッタ・カンビを投入した采配だ。ロシア系で身長202センチのアントロポワのブロックでチームは9-7とリードを広げ、一気に金メダルへと駆け上がった。
今回はメダルに届かなかった日本だが、2027年の世界選手権、2028年のオリンピックでは十分に希望があると思う。1974年メキシコ大会以来遠ざかっている金メダルに挑む基盤は整いつつある。
そのチームの中心はやはり石川真佑だ。彼女は今回、まさに世界を代表するエースとしてのプレーを披露した。レシーブの安定感に加え、141得点で大会3位のアタッカーに輝き、ブラジルのガビとともに大会ベストチームのレフトのアウトサイドヒッターにも選出された。2023年からイタリアリーグでプレー(フィレンツェ、ノヴァーラ)し、スパイクに重量感を増したことも大きい。
もうひとりの攻撃の柱は和田由紀子だ。100得点で大会6位。ジャンプサーブで7本のエースを決め、インパクトを残した。守備陣も良好で、小島満菜美と福留慧美の両リベロが活躍。小島はレシーブで日本のセカンドラインに安定を与え、元ミラノの福留もディフェンスで輝きを放った。
日本の今後の課題はミドルブロッカーの強化だろう。ここでもう一段高い力をつけられれば、日本は次回の大会で、堂々と金メダル候補に名乗りを上げられることだろう。